毛沢東の組織論はビジネスにも応用できる
共産主義国の指導者の著作は、いずれもベストセラーだ。特に毛沢東の著作は、世界的によく読まれた。現下の中国は、政治は共産主義で経済は資本主義という奇妙な体制になっているが、建国の父である毛沢東の著作は、現在も政治エリートの必読文献になっている。
毛沢東の著作にはイデオロギー過剰なものが多いが、日本のビジネスパーソンに現在も役に立つような内容のものも少なからずある。1930年に発表された「書物主義に反対する」(『毛沢東著作選』外文出版社・北京に収録)は、日本の企業や官庁で企画立案や調査に携わる人にとっても必読書だ。
まず、毛沢東は「調査なくして発言なし」という原則を明確にする。
〈きみがある問題について調査をしていなければ、その問題についてきみの発言権を停止する。それはあまりにも乱暴ではないか。すこしも乱暴ではない。その問題の現在の状況と歴史的な状況を調査しておらず、その実情を知らないのだから、その問題についての発言はでたらめにきまっている。でたらめでは問題が解決できないことは、だれでも知っている。してみると、きみの発言権を停止するのはどうして不当なことといえようか。多くの同志は1日じゅう目をつぶってでたらめをいっているが、これは共産党員の恥である。共産党員ともあろうものが目をつぶって、でたらめをいってよいだろうか。/いけない!/いけない!/調査に力をいれよう!/でたらめな発言に反対する!〉
会議で最も困るのは、根拠のない思いつき的な発言だ。しかも、こういう発言をする人は往々にして声が大きい。そのため、希望的観測に基づく非合理な意思決定がなされてしまうことがある。問題を解決するために調査は不可欠だ。
〈きみはその問題を解決できないのか。それなら、その問題の現状とその歴史を調査するがよい。調査によってすっかりあきらかになれば、それでその問題の解決策がでてくる。すべての結論は、状況を調査したあとにでてくるのであり、そのまえからあるのではない。自分ひとりで、あるいは一団のものをあつめて、調査もせずに、ただ頭をひねりまわして「方策を考え」、「構想をねる」のは、愚かものだけである。これではきっと、どんなよい方策も考えだせないし、どんなよい構想もたてられない、ということを知らなければならない。いいかえれば、まちがった方策やまちがった構想をうみだすにきまっているのである〉という指摘は正しい。〈調査とは「十ヵ月の懐胎」のようなものであり、問題の解決とは「ある日の分娩」のようなものである。調査とは問題を解決することである〉というのも真理だ。
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source : 文藝春秋 2019年1月号