私は1997年頃から芸能活動を始め、25歳で会社員の夫と結婚しました。現在は女性誌や広告でモデルとして仕事する一方、11歳の子をはじめ3児の母でもあります。
2年ほど前、私は育児や家事のボイコットを宣言しました。夫婦間で育児や家事をめぐる喧嘩が絶えず、「私に比べたら何もやってない」「俺だってやってる」の繰り返し。もう限界でした。そこで私がこなす家事や育児を1週間、夫にしてもらうことにしました。夫は快諾。自信もあったんでしょう。働きながら黙々と進めていましたが実態は想像以上に過酷だったようです。
しかし夫は1週間後、「期間を延長してほしい」と言うのです。「家事や育児という“仕事”は切れ目がなく、不慣れなこともあってパニックになってしまう。もう少し慣れて全体像が見えてくれば、手伝い方そのものが変わってくるような気がして」。
それから我が家における家事や育児の分担が以前よりもスムーズになったのは言うまでもありません。私の憤りは消えてなくなり、今では夫に感謝しかありません。
この体験は私にも大きな気付きを与えてくれました。家事・育児は妻であり母である私がやるのが当たり前など、私が描いていた家族の形、母親らしさ、妻らしさ、父親らしさ、夫らしさは自分の思い込みによって作り上げていたものだと実感したのです。
そこで真の意味で“私らしさ”を追求するために夫や子供達と何度も議論を重ね、昨年末、家族に夫婦別姓=事実婚を提案しました。
名古屋にある実家は牧野姓の本家で、牧野姓は私には大切なアイデンティティ。結婚するときも「姓を変えたくない」と主張したものの、変えざるをえませんでした。その後子どもが生まれると「夫側の家族の孫」と捉えられたり、私の両親からは「嫁にやったから私たちの老後の心配はしなくていい」と言われたりと「女性が姓を変更することは、結婚相手に所有されること?」と感じることもありました。
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source : 文藝春秋 2021年5月号