著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、ウー・ウェンさん(料理研究家)です。
私の父は根っからの優しい人。子供時代を思い返しても、怒られたことは一度もありません。いつも静かで、ニコニコと笑いながら座っているだけ。家族からは「お父さん。置物みたいだね」って言われていました。
私の生まれは中国の北京で、父は中国中央気象台で気象学者として働いていました。仕事では天気を観察し、休みの日の趣味は切手集めや写真を撮ること。人と会話するよりも、物や自然に向きあうことのほうが好きだったのだと思います。だけど、いつも優しい雰囲気で皆を温かく包み込んでくれる。父の器はとっても大きかったのです。会う人全員が父のことを好きになり、父を慕うお弟子さんも大勢いました。
私が小学生の頃、文化大革命で大好きな父と離れ離れに。父は1人だけ北京に留まり、母と私は下放のため、河北省へと移りました。河北省での生活は5~6年は続きましたが、父は月に1回、仕事の合間を縫って会いに来てくれていた。100キロくらいの距離を、なんと自転車に乗ってきていたのです。電車は本数が少なく、乗り換えもあるので、自転車のほうが良かったのでしょう。遠いところをはるばる来るのに、うちに到着しても喋るのは「大きくなったね」「元気そうだね」くらいでしたが(笑)。
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source : 文藝春秋 2022年6月号