日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する
★ラスプーチンの改革手法
みずほで「ラスプーチン」と恐れられる人物がいる。持株会社みずほフィナンシャルグループ(FG、木原正裕社長)の上ノ山信宏取締役兼執行役人事グループ長だ。
奇怪な風貌で知られた怪僧ラスプーチンとは違って、上ノ山氏はバンカー然とした紳士。その立ち居振る舞いや権力掌握術が「ラスプーチン」を彷彿とさせるという。
東大工学部出身の同氏は、1991年に旧日本興業銀行に入行。FGのグループ人事部副部長や営業第9部長、取締役会室長などを歴任したエリート中のエリートだ。同じ興銀出身の坂井辰史前社長からの寵愛を受け、将来の社長候補の筆頭に挙げられていた。
そんな上ノ山氏が目下、取組んでいるのが抜本的な人事制度改革だ。中堅・若手社員で構成する「企業風土改革ワーキンググループ」を立ち上げ、そのトップに上ノ山氏が就いている。
企業風土改革WGは、2カ月に1度のペースで上ノ山氏を中心に、志願した中堅・若手社員10数人が参加する。だが、「フリーハンドの議論にもかかわらず、上ノ山氏は気に入らない発言者に対して露骨な態度をとり、物言えば唇寒しの雰囲気だ」(みずほ関係者)という。
企業風土改革は、いうまでもなく昨年来のシステム障害の反省に立った施策であり、今年2月からFG社長に就いた木原氏が取組む最重要課題にほかならない。
企業風土改革WGは今年度中に課題を洗い出した上で、報告書をまとめ、役員に報告する予定だ。
金融庁は、システム障害時の業務改善命令において、みずほの企業風土を「言うべきことを言わない。言われたことだけしかしない姿勢」と痛烈に批判した。この企業風土改革WGの様子からも、その根深さはうかがい知れる。
★IT新星の夢遠のく
IT業界の新星として名を馳せたフリマアプリのメルカリ(山田進太郎CEO社長)が、正念場を迎えている。
2022年6月期に再び赤字転落。期待の米国事業は流通総額が減少し、国内の成長率も減速傾向にある。
そこで取り沙汰されているのは経営陣の刷新だ。米国子会社のCEOを務めるジョン・ラーゲリン氏は17年に三顧の礼で迎え入れたフェイスブック元幹部だ。
コロナ禍の在宅特需で一時勢いを得たものの、日本のブランドを海外で浸透させるのは難しい。株式市場からは「トップを替えるか、事業を撤退しないと、株価が持たない」との声が漏れ伝わる。
日本事業を統括するのが、元グリー(田中良和会長兼社長)幹部の青柳直樹氏だ。同氏も山田氏に請われる形で17年に決済・金融子会社メルペイの代表に就任、21年に暗号資産子会社メルコインの代表にもなった。今年からは、フリマアプリを含めた日本事業全般を指揮する。
青柳氏の出世に違和感を持つ社員も多い。メルペイはソフトバンク(宮川潤一社長兼CEO)らが出資するペイペイ(中山一郎社長兼CEO)にまるで歯が立たず、金食い虫のまま。メルコインは今年6月に金融庁への登録を完了したものの、競合他社から「あまりに遅い参入で、今さら何をするつもりなのか」と呆れられている。
青柳氏の後釜と目されているのが、同じくIT大手から移ってきたメルカリ会長の小泉文明氏だ。ミクシィ(木村弘毅社長)CFO時の手腕を買われ、現在はメルカリ傘下の鹿島アントラーズの運営会社社長も務める。
すでにメルカリは山田氏の共同創業者である富島寛氏、石塚亮氏が退職。両氏は米国事業を担ってきたが、成果を出せずラーゲリン氏が招聘された経緯がある。そのラーゲリン氏の後は、山田氏が自ら米国に乗り出すという観測もある。国内の稼ぎがあって初めて、海外投資も可能になる。創業来の世界挑戦という夢は遠のくばかりだ。
★「政商」の誤算と落日
総合人材サービスのパソナグループ(南部靖之グループ代表)は8月19日、定時株主総会を開き、竹中平蔵会長の退任を正式決定した。
これに先立ち、竹中氏は8月4日、自身のYouTubeチャンネルで次のように語った。
「私自身、たくさんの“老害”を見てきました。残念だけれど、年齢を重ねれば経験を積んで能力が高まる面と、知力体力が落ちてくる面があると思います。これは自分で判断しなきゃいけないと思います」
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source : 文藝春秋 2022年10月号