「これが母校の姿か」──激しい怒りを覚えた
はじまりは、憤りでした。
「何、この理事長は。うそでしょ」
アメフト部悪質タックル問題にまつわる報道に接し、いても立ってもいられなくなりました。
名の知れた大学のトップにこんな人がいて、こんな態度を取るのか。屈強な男性に囲まれ、自宅前から黒塗りの車に乗り込む姿を見て、テレビの前でしばらく呆然としてしまったほどです。
2018年、日本大学アメリカンフットボール部の選手が対戦相手である関西学院大学の選手に危険なタックルを行い負傷させる事件が起きた。さらに2021年10月には理事(当時)ら2人が附属病院建て替えをめぐる背任容疑で逮捕され、翌11月には田中英寿理事長(当時)が約5300万円の脱税容疑で逮捕、のちに有罪判決が下されるなど学校法人日本大学の理事会を舞台に不祥事が相次ぎ、大きな批判を浴びた。
悪質タックルの事件後、監督とコーチによる謝罪会見が行われましたが、これが火に油をそそぐような内容。2人の「言ってない」「覚えてない」という保身に走ったコメントや、会見を無理やり打ち切ろうとした様子は「日大の危機管理はなってない」とさらに批判を招きました。最高責任者である田中理事長が自ら事の次第を説明したり、ましてや謝罪する姿は見られませんでした。映し出されたのは、自宅から出てくるあの姿。まるで堅気でないような雰囲気が衝撃的でした。事件後、誰よりも先に会見を開いて謝罪したのは、タックルを指示された日大の若い選手なんですよ。
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source : 文藝春秋 2023年1月号