近年、秋に発表される小中学生の問題行動が深刻だ。小学校低学年から問題は増加しており、不登校は史上最多の24万人、いじめも史上最多の61万件(高校等も含む)。中学生の自殺は100件を越えて過去最高レベルに達している。特別支援学級の在籍者もここ10年あまりで倍増。この変化は2013年から始まり、増加の一途をたどっている。このデータは何を表しているのか。「脱ゆとり教育」の教科書に変わったのは、その前年の12年のことだ。それから10年の構造変化を考えてみたい。
一番大きな変化は、教育課程の肥大化と基礎の軽視だ。
学力向上に焦ったのか、早い段階から高度な問題を解かせようと、学習量は増やされた。「応用・活用」が重視され、問題も難しくなった。教科書は厚く重くなり、子どもは重いかばんに難儀するようになった。
だが学習の本質は基礎にある。応用問題を解く力は、基礎を徹底して鍛えてこそ身に付く。
かつて計算の基礎は小学校低学年で定着させたが、分数を小2から始めるなど教材が増え、基礎計算の練習時間が減った。にもかかわらず高学年では小数と分数を交えた高度な計算を多くやらせる。方程式の考え方や統計学など、中学数学の内容も小学校に入る。
国語の漢字学習には、不思議な決まりがある。学年で習う漢字を児童が書けるようになるのは翌年以降でいいとハードルを下げているのだ。とはいえ3年生の担任が2年生の漢字テストをするなど非現実的で、実際には書けないまま放置されがちだ。
加えて、小学校の英語学習が始まった。ゆとり時代に中学3年間で習う単語は900だったが、今は小学校2年間で700を学習し、中学3年間では1800、小中合計で2500。ゆとり時代の約3倍だ。しかも英語指導の経験のない小学校教師から学んでも、定着はおぼつかない。
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source : 文藝春秋 2023年2月号