日本の夜景を一変させたライトアップのパイオニア
欧州で照明デザインを学び、1968年の帰国後、照明デザイナーとしてのキャリアを開始した石井幹子(84)。当時の日本には「ライトアップ」の概念がなく、夜になると街の建造物は暗闇に沈んでいた。石井の仕事が注目を集めたのは1989年。東京タワーのライトアップを手掛け、大きなブームが巻き起こった。その後もレインボーブリッジ、白川郷合掌集落、ベルリン、ローマ、パリのランドマーク……国内外で光を灯し続けてきた。街に何度も通い、歴史を知ることで、その土地らしさを引き出す照明を考える。
時代は平成から令和へ。東京タワーは今も首都・東京のシンボルとして輝く。冬の暖かなオレンジの光を見上げ、石井は微笑んだ。
「帰省先や出張先から東京に戻ってきた時、タワーに向かって『ただいま』と挨拶する方もいらっしゃるんですよ。これから先も、大勢の人に愛される存在であってほしいです」
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source : 文藝春秋 2023年2月号