偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム
★磯崎新
建築家の磯崎新(いそざきあらた)は、戦後の日本建築界と建築思想をリードし、海外からも常に注目され続けた。
2019(平成31)年、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞する。祝福する声とともに、あまりに遅い授賞との不満も聞かれた。建築にとどまらず思想や芸術にもおよぶ活躍で、「謎の建築家」と思われたことに原因があるとの指摘もあった。
1931(昭和6)年、大分市に生まれる。実家は米穀商と廻船業を営んでいたが、父の操次は俳句や絵画にも造詣が深かった。磯崎も幼少より本や絵に親しむが、13歳のときに母が死去し、父が花街に入り浸り「妹と寂しい幼少期を送った」という。
45年、大分市を米軍の爆撃機が襲ったとき、逃げ惑って、街が瓦礫と化すのを目撃する。東京大学に在学中、途中下車した廃墟となった広島で、丹下健三設計の平和会館原爆記念陳列館(現・平和記念資料館)が「立ち上がろうとする」のを見て感激し、丹下に師事した。
丹下研究室では、黒川紀章と並び称されるが、彼を中心とするメタボリズムとは距離を置いた。63年に独立して磯崎新アトリエを開設し、70年の大阪万国博覧会では丹下に協力して「お祭り広場」を手掛ける。このとき、岡本太郎の太陽の塔の設置場所でもめるが、磯崎は広場のルーフをぶち抜く構想を打ち出して関係者を唖然とさせる。
この間、66年竣工の大分県立大分図書館(現・アートプラザ)の設計を引き受け、74年の群馬県立近代美術館と北九州市立美術館をそれぞれのスタイルで設計して驚嘆された。83年、つくばセンタービルが竣工し、今も先駆的作品とされている。
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source : 文藝春秋 2023年3月号