崔洋一、中村邦夫、渡辺徹、江沢民、吉田喜重

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム

★崔洋一

©時事通信社

 映画監督・崔洋一(さいよういち)は、在日コリアンとしての視点から、同胞と日本人を捉え直し、観客の心を揺り動かした。

 1993(平成5)年の『月はどっちに出ている』では、在日二世のタクシー運転手を主人公にして、在日二世たちの心理をコミカルに表現し、称賛と反発を受けた。「在日二世は日本にいるからこそピュアになっている部分がある。その明るい屈折みたいなものを描きたかった」。

 49(昭和24)年、長野県佐久市に生まれる。父は在日朝鮮人で母は日本人。幼いころ父は左翼の非合法活動を続けていたので、たまに来るオジサンであり、自分は母子家庭の子だと思っていた。東京朝鮮中高級学校を卒業し、東京綜合写真専門学校に入るが、学生運動に参加して、同校の理事長をつるし上げる。

 アルバイトで映画の照明助手を務め、ほどなく演出を手掛けた。76年公開の大島渚監督『愛のコリーダ』でチーフ助監督となり「死ぬほど苦労させられる」。81年にはテレビドラマ『プロハンター』の監督を務め、83年、内田裕也主演の『十階のモスキート』で映画監督デビュー、「自分でも乱暴な作品だと思った」が高い評価を得た。

 93年の『月はどっちに出ている』は梁石日の『タクシー狂躁曲』を原作に、鄭義信とシナリオを書いたが、読んだ梁が怒り出し、説得に時間を要した。しかし「面白くない?」と聞くと梁は「えらい面白いやん」と答えたという。報知映画賞、ブルーリボン賞、毎日映画コンクール賞など多くの賞を受賞した。

 その後も95年公開の『マークスの山』、98年の『犬、走る DOG RACE』、2002年の『刑務所の中』などが評判になる。盲導犬の生涯を描いた04年の『クイール』は「犬の視点から人間を見て」、崔作品には珍しい「泣かせる名作」と言われる。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

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