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★「天領」の開放なるか
楽天(三木谷浩史会長兼社長)の経営に黄信号が灯った。2022年12月期の最終損益は3728億円の赤字。赤字は4期連続で、赤字幅は過去最大となった。
22年12月期の売上収益は21年12月期に比べて15%増の1兆9278億円だった。楽天市場などのインターネットサービス事業、クレジットカード・銀行などの金融事業が伸びを牽引したが、19年10月にサービスを開始した携帯電話事業で進めている基地局の設備投資が利益を吹き飛ばした。
同社のカギを握るのは携帯電話事業の成長だ。同事業の収益は契約者数と契約あたりの月間収入の掛け算で決まるが、昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる。
22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通しという。だが、これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い。
楽天は21年3月に日本郵政から約1500億円の出資を受け、昨年11月には傘下の楽天証券ホールディングスが保有する楽天証券株の約2割をみずほ証券に売却して775億円を確保した。
手元の資産を切り売りする「タケノコ生活」は引き受ける相手がいてこそ成立する話だ。「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。
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source : 文藝春秋 2023年4月号