日本の総選挙は二日前に終わったが、こちらでの反応は驚くほどに低かった。ここ六年というものつづいた日本の迷走、一年ごとに首相が変わるという惨状は迷走以外の何ものでもないが、それにはさすがに愛想をつかしていたからだろう。
というわけで私が今現在(十二月十八日)持っている情報は、選挙前と選挙後の各党の議員数でしかない。だがそれを眺めながら、意外にも日本人は味な選択をしたのではないか、と思ったのである。
なぜならこの数字は、「決められない政治」に対する日本の有権者たちの答えであると同時に、政治家さえその気になれば、つまり小異を捨てて大同につくと腹を決めさえすれば、「決められる政治」に変わりうる数字であるからだ。
それにはまず、反対するのを特技としているらしい、日本未来の党、共産党、社民党、新党大地、新党日本等々の各党は勘定に入れないことにする。今回の総選挙でも、これらの党は大幅に議席を減らしたし、合計しても二十議席。衆院の定数四百八十のうちの二十である。また「決められない政治」になってしまった要因の一つは少数派の意見を尊重しすぎたところにあったのだから、それらの党への議席を軒並み減らした日本人の想いは、「勘定に入れない」と同じと考えてもよいのではないか。
それで「勘定に入れる」党だが、それは自民党、民主党、日本維新の会、公明党、みんなの党の各党になる。民主党以外は、いずれも議席を増やしている。また、政策でも大きなちがいはないし、何でも反対というわけでもないことでも共通している。これら五党の議席数を合計すれば、四百五十四議席。政策によって連携する党が変わったとしても、四百八十が定数の衆院では、「決められる政治」を行うに充分な数は確保できるだろう。
首班指名に際しては各党が別々の人に投票すると思うが、それは各党にもそれぞれの面子(めんつ)があるからで、首班指名の際の独自行動が、イコール政治上の独自行動になるわけではない。
今の日本にとっての最重要課題は、何よりもまず「決められる政治」の樹立にある。それさえ肝に銘じてわかっていれば、首班に誰を指名しようがたいしたことではないのである。
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source : 文藝春秋 2013年2月号