出雲大社六十年ぶりの大遷宮とあって、出雲に空路出かけた。出雲大社を訪ねるのは、これで四回目か五回目。はじめて訪れたのは、二十九歳の秋。
芸大の建築科に進学した友人から、あれだけは一回ぜひとも見に行くべきだと強くすすめられた。「あんなすごいものは、日本中どこにもない。奈良も京都も問題にならない」と。
半信半疑だったが、あの巨大神殿を間近で見たとき、その存在感に圧倒された。
大社に隣接する島根県立古代出雲歴史博物館で、この大遷宮のすべてを伝える「出雲大社展」をやっている。その展示の冒頭で、岡本太郎がはじめて大社を訪れたときの印象が紹介されている。
「真前から、真後から、ぐるぐる周囲を廻ってみると、簡潔な部分々々と、壮大な全体の重さ、その均衡がすばらしい。日本の過去の建築物で、これほど私をひきつけるものはなかった。この野蛮な凄み、迫力。――恐らく日本建築美の最高の表現だろう」
「野蛮な」とは思わないが、「凄みと迫力」という表現には全く同感だ。私も圧倒されて巨大な社の周囲をぐるぐる何度も廻った。何がすごいといって、屋根の端から突き出している千木の先端部分が空にぐさりと突き刺さっているかのように見えるところがすごい。
千木を見上げ、視野いっぱいに千木を入れたままグルグルまわりをすると、頭がクラクラしてくる。平安時代、寂蓮法師が、「天雲たな引(びく)山のなかばまで、かたそぎ(千木のこと)の見えけるなん、此世の事とも覚えざりける」と書いた気持がわかる。
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source : 文藝春秋 2013年7月号