福島第一原発にたまる処理水の放出をめぐり、中国政府は日本の水産物輸入を全面的に停止するなど反発を強めている。日本の外務省は9月1日、「科学的根拠に基づかない」とする反論を発表。放出開始後は環境省が周辺の海水を採取しトリチウム濃度を測定しているが、検出限界値を下回っている。国内では「ふるさと納税」で水産物を選び、漁業関係者を支援しようという動きもある。
文藝春秋では原発事故の初期対応から国際世論の波紋などの経緯について報じてきた。いまこの問題を多角的に理解するために読むべき記事、見るべきウェビナーがこの5本である。
外事警察秘録 第8回
3.11福島第一原発をめぐる日米協力
北村滋(前国家安全保障局長)
福島第一原発の事故直後から、使用済み核燃料の冷却が懸念されていた。ヘリによる注水の映像が記憶に残っている読者も少なくないだろう。前国家安全保障局長の北村氏は、注水作業をはじめとする福島第一原発事故の初期対応を担った一人だ。国際社会の信頼を固めるには事故対応に万全を期す必要があった。裏事情を知ることができる迫真の回顧録だ。
韓国の卑劣な「東京五輪放射能キャンペーン」
李相哲(龍谷大学教授)
東京五輪の開催が迫った時期には、放射能汚染の懸念を理由に、韓国選手団による「選手村の食事ボイコット」が取り沙汰された。この狙いのひとつは、日本の韓国向け貿易管理の厳格化への対抗策だったのではないかと、韓国の事情に詳しい李氏が読み解いた。
原子力活用を一歩前へ!
西村康稔(経済産業大臣)
廃炉や福島復興を前に進めるうえで「処理水の海洋放出は緊急性の高い問題」と、西村氏は語った。一方で、エネルギー価格の高騰が続いている昨今、“資源を持たざる国”の経済的な弱点を補完する効用を原子力に期待していると言う。
廃炉最前線 福島第一原発の「若き指揮官」たち
森健(ジャーナリスト)
処理水問題を考えるとき、事故の後始末に尽力している人たちがいることを忘れないでいたい。ジャーナリストの森氏は、廃炉作業に従事する会社員の群像をレポートした。汚染水対策と向き合ってきた現場技術者の肉声は必見だ。
【フル動画】高口康太×安田峰俊「『水』に祟られた中国」
高口康太(ジャーナリスト)×安田峰俊(ルポライター)
処理水の海洋放出に対する中国政府の猛抗議が話題となっているが、第8回となった「中国さっぱりわからん!」では、高口氏と安田氏の二人がふんだんな一次情報をふまえて中国の反応を解説している。市井に暮らす中国人たちの受け止め方は「リテラシーによって差が生じている」とのことだ。
source : 文藝春秋 電子版オリジナル