落語との縁は、都立青山高校に入学して、特に深い考えもなく落語研究会に入ったときから始まった。最近では、先輩が始めた「青山よかちょろ落語会」という名の落語会で、紀尾井小ホールの末席をけがしている。私が最若手なので、字義通り末席なのである。ここ数年で、「千早振る」、「道灌」、「天狗裁き」を演じた。
高座名は「爛漫亭菊正宗」。お酒の銘柄を2つ重ねて大酒豪のように聞こえるが、実は私は下戸である。では、なぜこの名になったのか? 新入生歓迎会の宴席で盛り上がった勢いで先輩に決められたなんてことは、高校生の分際であってはならないので、由来は不明としておこう。
青山高校の落研は昭和30年設立。全国初の高校落語サークルである。故・柳家小三治師匠は大先輩で、創設初期のメンバーだ。高座名は「青山亭無学」。
当時、高校で落研を創設するのはたいへんハードルが高かった。大学進学成績を上げなければいけない学校側からしたら、在校生が遊芸にうつつをぬかすなんぞ許容しがたい。結局、落語を通じて江戸文化や歴史を研究するサークルという名目で設立が認められた。
ところが、この設立の経緯が、のちの意外な展開につながることになる。
小三治青年が、大学進学を目指していたはずの浪人中に、五代目柳家小さんに入門してしまったのである。学校としてはこれを放置できない。なんと、彼を落研から除名するよう幹部に要求してきた。まじめな研究サークルのはずだったのに芸人を出すとはけしからん、というわけである。それにしても、卒業生に対して除名というのも、偏狭を通り越して、ほとんど滑稽ではないか。
実際に除名を伝達に行った先輩によれば、小三治さんは実に淡々としたもので、「まあ学校なんてえのは、このくらいのことをやると思ってましたよ」との反応だったという。なんだか、あの飄々、泰然とした芸風を想起させるではないか。もちろんこの一件の後も、小三治さんは落研と良好な関係を維持してくださった。
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source : 文藝春秋 2023年10月号