健康問題か、不倫疑惑か。気鋭の研究者が真相に迫る
中国の外相(外交部長)が消えた。6月25日にヴェトナムとスリランカの外相と会談した後、秦剛外交部長(57)の動静がぱったりと途絶えた。世界中が騒然となる中、1カ月経った7月25日に、中国の国営通信社・新華社は、全国人民代表大会(全人代=日本の国会にあたる)常務委員会が「秦剛が兼任する外交部長の職務を免ずる。王毅を外交部長に任命する」と決定したと簡潔に報じ、外交部長の交代が発表された。
秦剛は2022年秋の共産党大会で中央委員に抜擢され、12月30日に最年少で外交部長に就任した若きスターだった。中国外交の顔として、精力的に活動したが、わずか半年あまりで外交部長を解任された。秦剛の解任劇は、世界中の注目を浴び、大きな話題を呼んでいる。
しかし、中国政府はその理由について、何ら説明しておらず、謎が謎を呼んでいる状態である。中国政治のわかりづらさが詰まったような象徴的な事件だが、その背景に迫ってみよう。
中国のような権威主義国家では、現職の高官が突如として公の場に姿を見せなくなることがよくある。かつて文化大革命中には、毛沢東の後継者と目された林彪党副主席が突然消えたが、かなり時間が経った後、逃亡の末に飛行機事故で死亡したことが発表された。このように高官の不在について、政府や党がその理由を説明することはほとんどない。
なぜかと言えば、そもそも中国共産党は革命政党であり、敵対勢力から自らを守らなければならないからだ。その秘密主義の体質は、1920年代の成立当初から全く変わらない。それは世界中の共産主義政党に共通するものでもある。北朝鮮の情報はいつも不足しているし、民主主義社会にあっても日本共産党は党内の事情や問題を説明したがらず、党首公選制も実施していない。
健康問題か、汚職か
中国の高官が姿を消す場合、その理由に2つの可能性がある。1つは、健康問題だ。中国では国家指導者の健康状態に関わることは、どんな情報もトップシークレットだ。党大会を控えた2012年9月、総書記に就任する直前の習近平が2週間にわたって雲隠れしたことがあった。その際には日課の水泳で背中を負傷したとも、癌の摘出手術を受けたとも、暗殺未遂があったとも噂されたが、今日に至るまで公式説明はない。06年にも、当時最高指導部の一員だった黄菊副総理が会議を欠席するようになり、ほとんど公の場に登場しなくなったが、07年6月に死去が発表されるまで、公式的な情報が提供されることはなかった。
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source : 文藝春秋 2023年10月号