祖父である故人、藤沢武夫が本田宗一郎さんに続いてアメリカの自動車殿堂入りを果たしました。多くの方より祝福の言葉を頂きましたが、全ては祖父、そして同じ時代を生きたHONDAの皆様の功績であり、行き場所を失った、その賛辞が私のもとに来ていることに、気恥ずかしさと共に落涙するおもいでおります。祖父は本田宗一郎さんの影に徹した人です。本田宗一郎さんを生涯の友と思い、その友の影として本田技研を世界のHONDAにすることに美学を持っていた人ですから、影であったことに全く後悔もないでしょう。それでも、私が如き凡夫は、祖父が褒められれば嬉しい。遠く離れた自動車大国アメリカにおいて、没後30年以上もたった今、まだ「藤沢武夫」の名前を覚えていてくださる方がいて、殿堂入りしたと聞いた時、涙しないはずがありません。
少し、私が見た藤沢武夫の物語にお付き合い頂きたいと思います。
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source : 文藝春秋 2023年11月号
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