日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関。官僚の人事情報をどこよりも早くお届けする
★最強官庁を覆う諦観
「解散総選挙に向けた準備では?」。財務省関係者が囁くのは、またぞろ出てきた経済対策と補正予算である。この間、岸田文雄首相が財務省の茶谷栄治次官(昭和61年、旧大蔵省)と新川浩嗣主計局長(62年、同)を呼び出して、直々に目玉となる経済対策を指示したことが憶測を広げた。急激な物価高への対応はともかく、人口減少や賃上げ対策と言われると「本当に補正が必要なのか」と首を傾げたくなる。
だが、もし臨時国会で解散総選挙に踏み切れば、来年度予算の年内編成に支障を来す日程となる。そんなことは首相秘書官の経験がある新川主計局長、宇波弘貴官房長(平成元年、同)は百も承知。だが、省内を覆うのは「何を言っても無駄」という諦観だけだ。
思い起こされるのは細川護熙内閣である。この時、齋藤次郎次官(昭和34年、同)は政治改革の実現を優先し、予算の越年編成を決めた。政界最大の実力者だった小沢一郎氏と気脈を通じる一方、密かに首相公邸に通い、何度も協議。予算の越年編成と引き換えに齋藤大蔵省が実現しようとしたのが増税だ。結局、税率7%の国民福祉税導入は実現直前に、細川首相の「腰だめの数字」失言で幻となったが、旧大蔵省の執念と政治的立ち回りは際立った。今の財務省には、こうした手練はまるでない。時に「財務省の忠犬」と称される岸田首相だが、さにあらず。かつての最強官庁も、首相の指示には唯々諾々と従うしかないのだ。
★「野党補佐官」の余波
9月の内閣改造では木原誠二氏(平成5年、旧大蔵省)が週刊文春報道で官房副長官の退任を余儀なくされ、首相補佐官だった村井英樹氏(平成15年)が後任に。合わせて森まさこ氏らも補佐官を退任。後任は石原宏高氏(安保担当)、小里泰弘氏(農山漁村地域活性化担当)らだが、補佐官の職務とは主要政策の枝葉に嘴を挟み、手柄にする程度の意味しかない。
だが国民民主党の前参院議員・矢田稚子氏の首相補佐官起用は、毛色の違いが際立っている。同党の連立政権入り構想に再び脚光が集まり、結束力低下が著しい連合に楔が打ち込まれた格好。お飾りでしかないポスト一つで、政治的な影響力はおつりが来るほどだ。
昨年来、連立構想として取り沙汰されてきたのは、賃上げや労働政策に関する特命担当相を設置した上で国民民主から閣僚を起用するというもの。麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長のほか、自民党職員トップの元宿仁事務総長も入れ込み、大臣の椅子に涎をたらさんばかりの玉木雄一郎代表(平成5年、旧大蔵省)や榛葉賀津也幹事長と茂木氏らの定期会合を重ねてきた。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2023年11月号