ラクロスが五輪復活へ

佐々木 裕介 日本ラクロス協会理事長
エンタメ スポーツ

 ラクロスが2028年のロス五輪で120年ぶりに正式競技に復活することになった。この競技は米東海岸のアイビーリーグが強豪のカレッジスポーツだ。文武両道の選手を多く社会に輩出、近年ジュニア世代に人気で米国の競技人口が急成長している。

佐々木裕介さん(左)と、ホーデノショーニー代表チームのスコット・マーヘッドコーチ

 ラクロスは北米のネイティブアメリカン「ホーデノショーニー」による神聖な祭事や鍛錬が発祥で、彼らも他国と同じく代表チームとして世界選手権大会に参加するという、先住民を尊ぶユニークな競技文化を持つ。昔、その族長と話したことがある。なぜラクロスをプレーするのか。それは「自分のためでもチームのためでもない。次世代、次々世代、7世代先までの将来の若者がラクロスを楽しめる、そういう未来をいかに作りたいかということだ」と。

 棒の先に小さな網のついたスティックで堅いゴムボールを操りゴールを狙う、地上最速の格闘球技といわれる。男子はヘルメット等の防具をつけ、時速150キロの弾丸シュート、女子は高度なスティックワークと多彩な戦術が持ち味。ルールは防具の軽量化に伴いよく変わり、指導者や選手は適応力や進化することが大いに求められる。

女子日本代表 ©海藤秀満/日本ラクロス協会

 90カ国で約90万人の競技人口があり、実力は米国とカナダが頭一つ抜きんでる。その二強を、豪日英ホーデノショーニーが猛追する。強さはその国の競技人口と質で決まる。日本は選手や指導者、審判、運営担当者などラクロスの基盤となる人材に富む。その結果、日本も代表チームが世界で活躍してきた。

 もともと日本では1986年に10人余の関東の大学の1年生が、米国ジョンズ・ホプキンス大学の協力を得て最初のラクロス部を立ち上げた。多くの関係者の尽力で、現在247の大学、73の社会人クラブがある。ラクロスには自分の遊び場は自らが創るという自由な精神が根付いており、学生連盟が強力な現場力をもち、国内普及や大会運営を執行する。

 高校時代にサッカーをしていた私は、友人の誘いでその創部メンバーに加わった。人と違う新しい事がしたかったからだ。当初、勢いあまって他の大学に飛び込み、新入生を勧誘したことがあるが、不法侵入で大学から追い出されてしまった。でもスタートアップのワクワク感が競技を普及させるエンジンとなり、大学の枠を超えた友人との協働も大きな魅力になった。

男子日本代表 ©海藤秀満/日本ラクロス協会

 協会には「ラクロス・メイクス・フレンズ」というスローガンがある。太平洋戦争下の米収容所で捕虜の経験を持つ、日系3世のノリオ・エンドー初代協会トップの言葉だ。ラクロスを通じて培った国を超えた学生同士の友情は一生もので、各人が将来各国のリーダーになれば、世界のあらゆる紛争は回避解決できるという願いが込められている。

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source : 文藝春秋 2024年1月号

genre : エンタメ スポーツ