日本人と歩んできた 桜クロニクル

ライフ アート

現在から古へと遡る時間軸で愉しんでは――。来るお花見に向けて、桜博士として親しまれる、勝木俊雄さん(国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所)が語った。

【青森・弘前公園】弘前城の敷地に広がる公園。外濠に浮かぶ花筏も美しい ©Jiro Tateno/SEBUN PHOTO/amanaimages

 日本にはもともと野生のサクラが全国で見られ、親しまれていました。そして平安時代からお花見に利用され、日本の春を象徴する花となってきたのです。なかでも観賞用の種類として生まれた染井吉野が、その美しさで明治以降に東京から全国へと爆発的に広がりました。新宿御苑では今、都心のど真ん中で染井吉野を楽しめます。青森の弘前公園では3名の樹木医のもと、染井吉野を中心に2000本以上が花開く。現代ならではの名所です。

 一方、染井吉野がなかった頃のお花見は、野生のサクラが中心でした。奈良県吉野山は江戸時代、社寺への参拝客による植樹が流行り、山々がヤマザクラで覆われていきました。さらに人手の入っていない野趣を堪能できる地もあります。吉野山を越えた熊野には、新発見されたクマノザクラが自然林に点在し、奥ゆかしくも美しい姿を見せています。屋久島の小杉谷には、自生のツクシヤマザクラが咲き誇っている。どちらも奈良時代より前の、お花見の原点といえるでしょう。

【吉野山のヤマザクラ】“一目で千本見える。 絶景じゃ、絶景じゃ”と太閤・秀吉が褒め称えた。「茶店や絶景スポットがあり、サクラを総じて楽しめます」と勝木さん。 ©朝日新聞社/時事通信フォト

【和歌山県古座川町のクマノザクラ】国内で自生する野生種としては10種目で、2018年に勝木さんが発表した。新種の発見は約100年ぶりのこと。淡いピンク色で、小ぶりな花(下の写真)が特徴だ。「山奥でぽつりぽつりと佇む姿が、素朴でいて品があります」 写真=勝木さん提供

小ぶりな花のクマノザクラ 写真=勝木さん提供

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2024年4月号

genre : ライフ アート