時代を切り拓く“異能”の人びとの物語を、新進気鋭のライターたちが描く連載ノンフィクション。今回の主人公は、出入国在留管理庁長官・佐々木聖子氏です。
外国人労働者受入れの舵取りを託された“型破りの女性官僚”
「『外国人との共生社会』という新しい社会をつくっていく時代にあって、入管庁の果たす役割はますます重要になっていくと思う」
今年4月に発足
今年4月1日に法務省の外局として、入国管理局から格上げされる形で発足した出入国在留管理庁(入管庁)。初代長官に就任した佐々木聖子は就任会見で、そう抱負を語った。
入管庁によると、日本で働いている外国人労働者は約146万人。全国津々浦々、どこの工場、どこのコンビニにも、外国人従業員の姿を見ない日はない。日本社会は外国人抜きでは成り立たなくなっている。
そうした中、昨年12月に成立したのが、改正出入国管理法だ。従来の外国人労働の中核を占める技能実習制度は、賃金の不払いや長時間労働、受け入れ先による虐待などが相次ぎ、米国務省や国連から「強制労働」などと指摘されたこともあった。
その技能実習制度は維持されたものの、政府は新たな在留資格「特定技能」を創設。新資格では日本人と同等以上の報酬を義務づけ、技能実習制度では原則認められなかった転職の自由も採用された。高額な保証金を徴収するブローカーを排除する規定も盛り込まれた。今後5年間で、最大345,000人余の外国人労働者の受け入れを見込んでいる。
入管法改正に奔走
この入管法の制度設計に深く関わったのが、今年1月まで入管局担当の大臣官房審議官だった佐々木だ。
昨年2月、首相の安倍晋三が受け入れ拡大策の具体的検討を指示。だが、6月に閣議決定された「骨太の方針」に、新たな在留資格の創設が盛り込まれると、「技能実習制度を残したままでは意味がない」と野党が反発する。その過程で佐々木が訪ねたのが、野党の論客、元文科相の中川正春だ。中川が振り返る。
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source : 文藝春秋 2019年10月