色とりどりの化粧廻しは、晴れて関取に昇進した証。華やかな刺繡が、神聖な土俵を彩る。厳しい稽古と修業を乗り越えた先にある化粧廻しの晴れ姿。
故郷に錦を飾る日を夢見て
新十両昇進が決まると、後援者などから贈られる化粧廻し。その起源は江戸時代まで遡る。当初は取組用と土俵入り用の廻しが一体化しており、前に垂らした布に刺繍を施していた。その後、土俵入り専用の化粧廻しが作られ、現在の形になったのは1780年代頃。江戸後期になると、大名家のお抱え力士は各藩主から贈られた、紋付きの化粧廻しを纏った。
現代では龍や虎など、雄々しくきらびやかな刺繍が施されてきたが、近年はキャラクターや母校の校章など、デザインは多種多様。素材は博多織の生地で、大関・横綱になると西陣織が許される。下部には「馬簾」と呼ばれる房飾りがあしらわれ、送り主の名前もさり気なく覗く。横綱になると太刀持ちと露払いとの「三つ揃い」となり、贈呈する後援者たちは嬉しい悲鳴を上げることに。
値段は「最低100万円から」と言われていたが、専門職人の減少や材料費の高騰で、現在では倍の値段が相場だそう。バブルの時代には、金糸銀糸をふんだんに使い、ダイヤモンドなどの宝石を埋め込んだ、億の値段を超える“超高級化粧廻し”や、スイッチを入れて光らせる“電飾化粧廻し”も登場し、話題を呼んだ。
誰もがいつかは横綱に――三つ揃いの化粧廻しを纏った土俵入りで、晴れて故郷に錦を飾る日を夢見続けている。
初めての化粧廻し
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