「俺が沢木さんに“答え”を求めた」カシアス内藤さんのまなざしから実感した、取材者・沢木耕太郎さんとの深い信頼関係

vol.84

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 きたる2025年は、昭和改元からちょうど100周年にあたります。「文藝春秋」1月号の大特集「昭和100年の100人 高度成長とバブル編」では、激動の時代を賑わせた100人以上の人々について、ゆかりのある方々に語って(寄稿して)いただきました。

 この特集のための取材で私が訪れたのは、横浜市中区にある「E&Jカシアス・ボクシングジム」。このジムの主であるカシアス内藤さんに、ノンフィクション作家・沢木耕太郎さんについてお話を訊きました。

カシアス内藤さん ©文藝春秋

 ジムの扉を開けると、にこやかな笑みを浮かべたカシアスさんの姿が。あまたのボクサーの汗を吸ってきたであろう年季の入ったリングに圧倒されつつ、インタビューを開始しました。

 沢木さんといえば、紀行文の金字塔『深夜特急』(昭和61年~平成4年)、17歳の右翼少年による社会党委員長刺殺事件を題材とした『テロルの決算』(昭和53年)など、数々の傑作を世に送り出してきたノンフィクション作家です。

 カシアスさんは昭和43(1968)年にデビューし、無敗のまま東洋ミドル級王者に。ところが初防衛戦で黒星がついて以降、キャリアに陰りが生じます。沢木さんと出会ったのは昭和48年、カシアスさんからタイトルを奪った韓国の柳済斗とのリベンジ戦を控えていた頃だったそうです。

 その時の話は「クレイになれなかった男」(沢木耕太郎著『敗れざる者たち』所収)で描かれているのですが、「この本を読むまで、俺は俺自身のことを何も分かっていなかった。ハンマーで頭を殴られたような衝撃とは、こういうことを言うんだな」と語るカシアスさんの真剣なまなざしが印象的でした。

「いいこと、悪いこと、それは関係ない。そのままずばり書いてくれる。そこがあの人に惚れた理由だよね。取材を受けるとき、普通は『よく書いてくださいよ』と言うのかもしれない。でも、俺は『好きなように書いてください』と言う。ひょっとしたら間違っているかもしれないよ。でも、信用する。信用さえできれば、好きに書いてもらっていい。だって、俺が沢木さんに“答え”を求めたわけなんだから」

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