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女流棋士第一号・蛸島彰子女流六段が語る「奨励会でたった一人の女性だった青春時代」

女流棋士第一号・蛸島彰子女流六段が語る「奨励会でたった一人の女性だった青春時代」

蛸島彰子女流六段インタビュー #1

2019/07/25
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女ひとりきり、おだてられたり敬遠されたり

 将棋界は完全な男性社会でしたが、当時から将棋連盟の先生方の間には、女性にも将棋に親しんでほしい、女性の将棋ファンを増やしたいという思いがあった。だから、奨励会に女子として初めて入り、男子に交じって将棋を指す私のことを何かと気にかけて下さった。とにかく女の子がめずらしいものですから、それこそ「天才少女」なんて記事でおだてて下さったり(笑)。

 その一方で、奨励会の男の子たちは、やっぱり女の子に負けると男の子に負ける以上に悔しいし、嫌なんですよね。絶対に女には負けられない、女に負けるなんて恥だ、と思っている。ずっと後で知ったんですが、私に負けたら丸坊主になる、罰金を払う、というルールを男の子たちは作っていたんだそうです。森けい二九段も、私に負けて坊主になって気を引きしめたそうです。

 

 とにかく、女はひとりきり。塾生部屋という部屋があるんですけれど、男の子たちはそこに集まってそれこそ徹夜で研究したり、勉強する。でも、なかなかそういう部屋には、足を踏み込めませんでしたね。

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黒星の連続……。相当、暗い青春でした(笑)

 奨励会に入ってからは、勝ったり負けたりで、最初はそれほど負け続けることもありませんでした。昇級するには、6連勝か9勝3敗の成績を取らないといけません。私は5級まで規定通り昇級できたのですが、5級からなかなか昇級できなくなりました。

 そうしましたら、理事の先生方が、私はたったひとりの女の子だから、男の子と同じ条件では昇級が難しい。指し分け(5勝5敗)でも昇級できるように、私だけ規定を緩くしてあげよう、と言い出したんですね。私は「やりにくくなるから、今までどおりの条件にしてください」と抗議したんですけれど、「そんなことを言う前に、あなたはただ強くなることだけ考えなさい。それ以外は考えないでいい」と言われてしまって。

 それだと実力よりも先に級が上がってしまう。やっと5級の力がついたなと思うと、4級に上がるわけです。すると昇級した直後は、ずっと勝てなくて黒星が続く。ようやく指し分けになるとまた昇級、黒星の連続……。気持ちが落ち込みました。

 

 1級までは、それでもなんとか指し分けで順調に昇級していったんですね。高校3年生までに。ところが、そこでピタッと止まってしまった。高校卒業するまでに初段になれればと思っていましたが、なれませんでした。とにかく初段にまではなりたかったんです。でも、1年経っても、2年経ってもなれなかった。

 多分、奨励会始まって以来の連敗記録を作ったと思います。自分がとても情けなくて、毎日、落ち込んでいました。「そんなに自分を卑下するものじゃありませんよ」って人に注意されるくらい、いじけていた。相当、暗い青春でした(笑)。