毎年、終戦記念日となると話題になる、靖国神社の「軍服コスプレ」。同神社に批判的な者はもとより、肯定的な者にも、「英霊に失礼」などとあまり評判がよろしくないが、このような光景はいつはじまったのか。
「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」。平成の天皇が5年前このように発言した満洲事変の勃発より、今日(9月18日)でちょうど89年。そんな記念すべき日に、戦争が終わったとされる日の、ふしぎな現象を振り返ってみたい。
浅草で旧陸軍の軍服を仕入れた18歳
「旧陸軍軍服姿、少佐の襟章の神奈川県厚木市、●●●●さん(18)。『中学校のころから戦争映画や“コンバット”を見て軍人が好きになった。軍服は浅草で仕入れました。天皇陛下は神様です』。26日に陸上自衛隊入隊とか」(中日新聞、1987年8月16日。漢数字はアラビア数字に改め、人名は伏せた。以下同じ)。
「軍服コスプレ」を求めて新聞紙面をさかのぼると、こんな記事に行き当たる。かなり古い事例のひとつだろう。もちろん場所は、終戦記念日の靖国神社。この男性は、現在50代前半になっているはずだ。
ただ1980年代当時、靖国の軍服といえば、高齢者によるものが圧倒的に多かった。
そもそもは「コスプレ」ではなかった?
「大村益次郎銅像前で旧軍の軍服姿で集まる老人の一団に対し、中年主婦が『そんな格好をすると逆効果。兵隊時代がつらかったはずなのに、いまではそれを賛美するのか。戦争反対はだれもの願いなのに』。一団と2、3分言い争い」(朝日新聞、1985年8月15日)。
「ラッパを鳴らしながら海軍服姿で行進する団体を横目でにらむ旭川編成の旧陸軍221連隊(原文ママ)の生き残りの●●●●●さん(70)。『とてもあんなまねをする気にならない』。(中略)日本の現状をレポートしにきたベルギーのテレビ局カメラマン。軍服姿で『君が代』や『海ゆかば』を斉唱する旧軍人らをビデオに収め、『われわれには理解しがたい行動』と首をかしげた」(北海道新聞、1989年8月16日)。