幅広いセクションのスタッフが社内にいるからこそ
“作画”は日常的に使われる言葉のため、アニメーションの画面の美しさを指して「作画がすごい」と語られがちである。しかしアニメーションにおいて“作画”とは、正しくはアニメーター(原画や動画などの絵を描くスタッフ)が生み出す動きの表現(キャラクターの日常芝居やアクションなど)を指す用語である。
アニメーションの“撮影”というと“作画”以上にわかりにくい呼称だが、かつてはアナログ素材を重ね合わせて1コマずつフィルム“撮影”していた名残で、今もそう呼ばれている。それが2000年頃を境に、ソフトウェア上でのデジタル処理に切り替わることで、アニメーションのビジュアルへの影響力を増している。
『君の名は。』や『天気の子』の新海誠監督が、アニメ業界で長年「撮影の作家」と呼ばれてきたと言えば少しはイメージが伝わるだろうか。
また『鬼滅の刃』は“撮影”と並ぶデジタル表現である、“3DCG“の大胆な活用も特徴的だ。川の流れや煙、揺れる木々などがフォトリアルな3DCGで描画され、無限列車も外観や内部の空間が3Dモデリングされているからこそ可能になったカメラワークや演出が活きているという。
「『鬼滅の刃』の3DCGは、うまく2Dアニメに寄り添った使われ方をしているように感じます。もし列車内のバトルシーンをCG専門の会社が制作したら、刀を振るときに天井や椅子に当たらないかといった空間的な整合性に引っ張られて、アクションが地味にまとまってしまうことになりがちです。しかしufotableのCGはカットごとに空間を誤魔化し、画面の見映えを優先していた。それはufotableのデジタル映像部が、アニメらしい見せ方を熟知しているからこそ実現できたことです」
アニメ制作会社の中には、“撮影”や“CG”を専門の会社に外注しているスタジオも多い。しかしufotableは、“撮影”や“CG”といったデジタル処理の担当部門をはじめ、演出家、アニメーター、仕上げ(彩色)、美術など幅広いセクションのスタッフの社員化を推し進めることで、自社で内製できる制作環境を長い年月をかけて整備してきた稀有なスタジオである。
そうした地道な積み重ねがあったからこそ、“作画”を担うアニメーターと、“撮影・CG”を担うデジタル映像部といった異なるセクションどうしが緊密な連携を取り合うことが可能になったのだろう。