1ページ目から読む
5/5ページ目
「パンフレットには、ラストのバトルを担当した外崎春雄監督の絵コンテが一部掲載されていました。それを見ると、コンテの時点ですでに画面映えする完成度の高いポージングが描き込まれているんです。外崎監督自身が卓越したアニメーターであって、コンテで詳細なビジュアルイメージを描き示せることで、全体に渡って統一感のある動きやポージングが生まれているのでしょうね」
監督が卓越したアニメーターだからこそ
そのうえで、外崎監督の魅力的なポージングは、“演出”の力によってより効果的に印象づけられているという。
「バトルの合間にうまく会話劇を展開していますよね。構えを取ったり拳と刀で鍔迫り合いをする瞬間がテンポよく挟まり、そのタイミングで会話する。だからアクションが続いても展開にメリハリがあり、絵の止まる瞬間を作ることでポージングも目に残ります」
このように『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、ufotableという原作と真摯に向き合うスタジオの手で、作画・美術・撮影・3DCGといった各セクションが演出のもと密に連携し合いながら作られているからこそ、こんなにも多くの観客を魅了し得たのではないだろうか。
「劇場版『鬼滅の刃』は、演出家の意図が隅々まで行き届き、そこに各セクションのスタッフによる誠実な努力が重なれば、ここまで映像全体のクオリティを高められるという事実を証明してくれました。アニメ業界人はみな、身の引き締まる思いだと思います。本当に刺激的な作品でしたね」(文:高橋克則、取材・文:高瀬康司)