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「『鬼滅の刃』には、ジブリのように絵を動かすことに特化したスーパーアニメーターが大勢参加しているわけではありません。しかし、情報量の多い原作絵のイメージをきちんと踏襲し、安定した丁寧な作画によって、作品の魅力を余すところなく伝えていると思います」
イメージを損なわずにアニメ化することが難しい原作の絵柄に、労を惜しまず正面から取り組んだことが、劇場版『鬼滅の刃』がファンの信頼を勝ち得た理由の1つなのだろう。そしてそれは、「絵を動かすことを目的とするのではなく、演出主導で作品ができている」からこそ実現できたことだと、沓名氏は分析を続ける。
監督の絵コンテの完成度が高い
演出主導の例としてまず挙がったのが、バトルシーンの構成の妙である。
「この映画には大きく分けて、4つのバトルシーンがあります。最初の戦いは列車内という狭い空間で行われるため、大立ち回りは見せられません。その代わりに、一人ひとりが活躍し、一瞬の決め技で片がつく。それぞれのキャラクターを印象づける、作品の幕開けに相応しい内容になっています。それが列車の上という足場の悪いシチュエーションを経て、最後のバトルでは一転、広い空間での長い戦いになる。大枠は原作通りではありますが、“演出”的視点のある映像化によってコントラストがより際立ったと思います」
またバトルシーン内での構成も練られていると称賛を惜しまない。炭治郎の先輩である煉獄杏寿郎が猗窩座(上弦の参)と死闘を繰り広げるラストバトル。あの映像の力強さの秘密を、絵コンテから読み解いて見せる。