FFシリーズは、目の肥えたファンが多く、厳しい批判にさらされることもあります。ただ、それは人気の裏返しであり、ゲームシステムをガラリと変えるなどの挑戦を続けているからこそでもあります。そうした姿勢がFFシリーズの魅力であり「らしさ」なのです。
FF16が背負う3つの期待
最新作のFF16は、ビッグタイトルだけに多くの期待を背負っています。大きくは次の3つです。
1つ目は、ヒットするのは「当然」で、ハードそのものの売り上げをけん引してもらわなくてはいけない……というPS5の看板タイトルとしての期待です。
そういう意味ではFF16は、FF10(2001年発売)の時と立ち位置が似ています。FF10が出た当時、販売されていたPS2はDVD再生機という位置づけが強く、肝心のソフトの売れ行きは当初芳しくありませんでした。FF10の登場で、他のソフトの売れ行きが伸びていったのです。
FF16も、PS5の市場への供給体制がいよいよ整備されたいま、まさに満を持しての登場になっていて、他のPS5ソフトの売れ行きを伸ばすような“触媒”の働きを求められています。
2つ目は、ゲーム業界自体を盛り上げることへの期待です。知名度も高く影響の及ぶ範囲も広いタイトルであり、歴代シリーズ同様に今回も巨額の開発費を投じ、テーマソングを担当した米津玄師さんを筆頭に、腕利きのクリエーターを集結させています。ゲームの中身はもちろんビジネスとしても大きく展開していくことが期待されています。
3つ目は、RPGの可能性をさらに高めることへの期待です。かつて日本のゲームで人気のジャンルと言えばRPGでしたが、特に日本のクラシックなRPGには「やらされている感が強い」というイメージを持つ人もいて、今ではFPS(一人称視点のシューティングゲーム)や、自分の好きにモノづくりに打ち込める「クラフトゲーム」、マップの中で自由に冒険できるオープンワールドのジャンルが人気になっています。
この流れの中で登場した今回のFF16 は、RPGでありながらもアクションの要素をかなり強く打ち出しています。面白いのは、初心者でも戦闘シーンでボタンをガチャガチャ叩いて遊べる一方で、設定を変更すればコアなゲーマーでも手ごたえがあるように作っていることです。
プレーヤーの工夫次第でコンボ(連続攻撃)を繰り出すことができますし、一度クリアしたボス戦なども、より華麗な「コントローラーさばき」を競えるように繰り返し挑戦できるようになっていて、ゲーム実況を意識してか従来のRPGとは違う作りになっています。
こうした仕様は、初心者と上級者の両方にも対応できる“欲張り”なものですが、「実にらしい」とも言えます。以前、FF14で吉田直樹プロデューサーに取材した際にも、「ドラゴンクエスト」の生みの親である堀井雄二さんから、初心者への配慮について教わったと語っていました。