地方自治体が主催する競馬・競輪・オートレース・ボートレースを総称した「公営競技」は、合計年間約7兆5000億円もの売上を記録している。不景気が続くなか、その額はなんとバブル期にも匹敵するほどだ。しかし、一方で主催者の利益はほとんど増えいていないという。はたして、なぜなのか。
ここでは、北海学園大学教授の古林英一氏の著書『公営競技史 競馬・競輪・オートレース・ボートレース』(角川新書)の一部を抜粋。公営競技における収支の謎に迫る。(全2回の2回目/前編を読む)
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バブル期に迫る公営競技の売上増
バブル崩壊後、長期にわたり低落を続けていた公営競技の売上は2011年頃からようやく上昇に転じた。基本的には景気回復の影響とみるべきだが、売上回復の度合いは各競技一律ではない。特にボートレースの伸びが著しい。21年度の売上額は2兆3926億円と、1991年度の2兆2137億円を上回り過去最高の売上となっている。
繰り返し述べてきたことだが、ボートレースがもっともとっつきやすい競技だということは確かにあろうが、それだけではない。有名タレントを上手く使ったテレビCMの多さは他の競技を圧倒しているし、吉本興業のタレントとのコラボレーションも多い。また、パチンコ関係のライターにボートレースをアピールさせるなどの手法で、パチンコ愛好者をターゲットにファン増大を狙うなど、他の競技に比べると戦略的に広報活動をおこなってきた成果も大きいだろう。
競技場の廃止と選手数の減少
そもそもボートレースは他の公営競技に比べて開催日数が多い。中央競馬とボートレースは縮小期でも開催日数を減らさなかった。中央競馬の開催日数は77年以来ずっと288日で一定だし、ボートレースも91年度以降もほぼ同じ日数で開催を続けている。
91年度と2010年度の開催日数を比較すると、地方競馬、競輪、オートレースはいずれも約4割減っている。競技場廃止の影響も大きいが、競輪とオートレースでは施行者が開催日数を減らしているのだ。