明治末期から大正にかけて、三井物産と並ぶ総合商社として名を馳せた鈴木商店。神戸の個人商店だった同店を世界的な大企業へと発展させたのは、店主・鈴木岩治郎の急逝後に経営を任された番頭・金子直吉(かねこなおきち)(1866〜1944)だった。
実弟の曾孫で、鈴木商店記念館の編集委員として直吉の功績を研究している金子直三(なおぞう)氏が語る。
神戸製鋼所、帝人、双日、日本製粉、サッポロビール……。こうした名だたる企業の歴史をたどると、鈴木商店に行き当たります。直吉は鈴木商店の事業の多角化を推進し、化学や鉄鋼、鉱業といったさまざまな分野に進出。多いときには80社を超える関連会社を抱えるほどの一大コンツェルンに成長させました。

しかし、こうした事業拡大は、決して金儲けや私利私欲のためではなかったようです。鈴木商店はのちの大臣や企業経営者など、政財界に多くの人材を輩出しましたが、彼らが直吉についてどう語っているかを整理してみると、みな口をそろえて「私心のない人だった」と述べている。では、直吉はなぜこれほど多くの事業に乗り出したのか。その理由は、直吉が周辺に語っていたこんな言葉に現れています。
「小さい山国で資源に乏しい日本を強大にするには、工業によるほかに道はない」
日本の将来を見据えていた直吉は、優れた工業製品を生産し輸出することが、日本が産業国家として世界に確固たる地位を築く礎となると考えていたのです。
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source : 文藝春秋 2017年4月号