原田眞人「公開初日に『タクシードライバー』を観に行ったら、スコセッシが…」――編集部員が選ぶ“2025年の名言”

Part2

電子版ORIGINAL

NEW

エンタメ スポーツ 映画

2025年に「文藝春秋PLUS」に掲載された記事の中から、編集部員がとくに心を掴まれた「イチ押しの言葉」を紹介します。今回は、原田眞人さん、長嶋茂雄さんら、この1年に逝去された方々に関係した言葉を集めました。

原田眞人「公開初日に『タクシードライバー』を観に行ったら、スコセッシが映画館のロビーをうろうろしていた」

(2025年7月号、「70年代ハリウッド万歳!」

 

原田眞人さんが12月8日に亡くなったというニュースには本当に驚きました。2025年7月号で芝山幹郎さんと「70年代アメリカ映画」を語っていただく対談をお願いし、その対談の際は本当にお元気だったからです。原田さんは70年代のロスで活動を始められた方で、当時の空気感について生き生きと語っていただきました。観客と製作陣の距離が近い、映画産業の幸福な時代に思いをはせられました。原田眞人さんのご冥福をお祈りします。(編集部・西崎)

小倉智昭「巨泉さんは何度も『また小倉のバカが』とボヤく」

(2025年1月号、「大橋巨泉 視聴率が見える人」〈昭和100年の100人 高度成長とバブル編〉)

 

昭和58年に始まった大橋巨泉の「世界まるごとHOWマッチ」にナレーターとして起用され、その甲高い声が話題となり、人気キャスターへの第一歩を踏み出した小倉さん。令和の時代には絶対にあり得ない、師の型破りな番組制作の様子を熱っぽく、愛情たっぷりに語ってくれました。このインタビューの1カ月半後、小倉さんは令和6年12月9日、膀胱がんのために77歳で亡くなりました。(編集部・渡邉)

森祇晶「長嶋さんは1歳上だけど、僕のほうが先にプロ入りしていたので、“シゲやん”と呼んでいました」

(2025年8月号、「シゲやんとの本当の仲」〈長嶋茂雄33人の証言〉)

 

森氏と長嶋茂雄氏は、伝説のV9戦士であり、その後は巨人と西武の監督として日本シリーズを闘った。なにかにつけ、「確執」のある2人として語られていたせいか、森氏が「シゲやん」と呼んでいたことを初めて知った。
「僕とミスターの関係について周りからは憶測でさんざん言われてきましたけど、根底では、野球が好きという気持ちでつながっていた。僕はミスターと共に野球人生を過ごせたことを幸せに思っています。だから今、本当に寂しいんです」とも森氏は語っており、ミスターに対する思いを改めて知ることができた。(編集部・松崎)

長田昭二「『アウアウ……』とオットセイのような醜声を洩らすだけの対談になってしまった」

(2025年6月1日配信「貧血で階段が上れない…がん末期の体調不良は突然やって来た」〈僕の前立腺がんレポート〉)

 

「僕の前立腺がんレポート」を文藝春秋PLUSに連載中だった長田昭二さんが亡くなったのは6月14日。第25回(6月1日公開)の原稿が絶筆となりました。最後はパソコンに向かうことが難しくなり、画板に原稿用紙を置いて、ベッドで横になりながらの執筆でした。
物書きとしての執念を感じたのは、6月1日の公開直前でした。そんな状態で原稿を書き上げていたにもかかわらず、「あの話を入れないと」と数日前に会った声優の後藤邑子さんとの面会を追記したいとLINEがあったのです。「ご無理なく」と返事すると、2時間後には手書き原稿をスマホで撮影した写真が送られてきました。冒頭の一文は、最後の最後に加筆した原稿の一部です。あの体調でオットセイの喩え……。最後まで読者を楽しませることにこだわった、長田さんらしい絶筆でした。(編集部・三阪)

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : エンタメ スポーツ 映画