名著の出にくい時代

わたしのベスト3

片山 杜秀 評論家
エンタメ 読書
慶應義塾大学教授の片山杜秀さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。
片山さんver1 (1)
 

 平成は名著の出にくい時代だったと思う。過剰な現実が学問や文学の想像力を凌駕し、文脈を付ける前に、世界がいつも先に行く。令和に読み継ぎたい本を平成から探そうとすると、まとまった小説や評論よりも、断片的なインタヴューやツイッターや数字の羅列が思い出される。

 現実の過剰性を意識させた出来事に、たとえば平成7年の地下鉄サリン事件があった。大本教事件は高橋和巳の『邪宗門』を生んだけれど、オウム真理教の事件は全体小説的な構想力ではもはや捉まらない。教祖は裁判で何も語らず、彼を取り巻く人々はあまりに多く、皆が勝手な方を向いている。そこから生まれうる本は、関係者へのインタヴュー集くらいのものだ。村上春樹の『約束された場所で―underground 2』のような。この本は物語にならぬカオスへの耐え方を教える。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2020年1月号

genre : エンタメ 読書