富がテクノロジーを腐らせていく
著者は行動力に溢れた敏腕ジャーナリスト。しかし、そのあまりに攻撃的な筆致は好みではない。独善的といってもよいほど自信家。ともすると自己陶酔に流れる。それでも本書は面白い。その最大の理由は副題の「テック業界“ほぼ”全史の取材録」にある。IT革命が起きた30年前、ネットスケープやAOL(といっても、若い読者は名前も知らないだろう)が先端を走っていたころから、著者は一貫してデジタル業界の最前線で取材活動を続けてきた。記述に迫力がある。

デジタル化できるものはすべてデジタル化される――新興分野だったインターネットを取材し始めた当時、著者はテクノロジーが世界を変えると心から信じていた。その考えは間違っていなかった。しかし、テクノロジーには破壊性もあった。何よりもテック業界のリーダーを壊していく。巨万の富を手にすると、媚びへつらう取り巻きが後を絶たない。権力者の多くは世間が自分の言葉をありがたがっていると思い始める。自画自賛と自己欺瞞はもはやシリコンバレーのエートスの一部をなす。
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