赤貧から這い上がり、何度も危機を乗り越えてきた
10月18日から始まる5年に1度の中国共産党党大会。中国だけでなく、世界の経済、安全保障のパワーバランスを左右する政治イベントだ。今回の第19回党大会が国際的に注目されているのは、そこで習近平総書記による“独裁体制”確立の可否が見えてくるからだ。
焦点は主に3つある。党規約に盛り込まれる習近平の指導理念・思想が、「習近平思想」という名前となるか。1982年に廃止された、最高議決権を持つ「党主席」制度が復活するか。そして、“チャイナセブン”と呼ばれる党の最高指導部、政治局常務委員7人の人事の行方だ。
9月下旬時点での状況を概観しておこう。
9月18日、北京で開催された政治局会議において、今年の党大会で党規約を改正し、「党中央が提示した治国理政の新理念、新思想、新戦略」を書き入れることが決定したと国営の新華社通信が報じた。党関係筋の話を総合すると習はこの新しい指導理念を「習近平思想」と名付けたがっているが、党内には強い抵抗感を持つ者が多いという。
現在、党規約の総綱には、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「3つの代表」、「科学的発展観」と過去の共産党指導者の指導理念が盛り込まれている。中国人指導者の名前を冠したものは毛沢東と鄧小平だけで、江沢民の「3つの代表」論、胡錦濤の「科学的発展観」には名前は入っていない。もし「習近平思想」という言葉が入れば、習が毛沢東、鄧小平に次ぐ国家指導者であることを内外にアピールすることになる。しかも「思想」となれば建国者である毛沢東と肩を並べるわけだ。共産党では、主義↓思想↓理論の順で重要であり、毛沢東思想は鄧小平理論より上と見られている。「習近平思想」と呼ぶようになれば、その時点で中国経済を立て直した鄧小平を越えてしまう。これに党内が反発しているのだ。
規約に盛り込まれる新理念・新思想を「習近平思想」と名付けるか、「習近平の治国理政思想」といった婉曲表現になるか、あるいは思想という言葉自体を使わないか。習の党内評価、権力の掌握ぶりが測れる。
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source : 文藝春秋 2017年11月号