米中「競争」と「封じ込め」の間の「拒否」

新世界地政学 第136回

ニュース 政治 国際

 コロナ危機によるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の加速化とウクライナ戦争によるグリーン・トランスフォーメーション(GX)の必要性はいずれも、半導体への需要を急増させている。今後、AI、量子コンピューティング、バイオ、IoT、ポスト5Gが社会実装されるにつれ、半導体需要は劇的に高まるだろう。

 半導体は計算能力の素であり、国力と防衛力の基でもある。それ故に半導体は、米国と中国の熾烈な覇権争いの焦点となりつつある。米商務省が10月上旬発表した、米国や西側から中国への先端半導体の輸出管理の強化は、製造施設・製品サービスや、技術者の派遣をも対象とする厳しい内容のようだ。

 バイデン政権の対中戦略の基本的な方針は、競争的共存である。しかし、オーストラリアのケビン・ラッド元首相が指摘するように第三期目に入った習近平体制は、「経済はマルクス主義、政治はレーニン主義、対外関係は民族主義の結合」を特徴としている。中国は、世界のグローバル・サプライチェーンを中国の“大循環”市場に「拉緊」(引き付け、従えさせる)する“習近平ドクトリン”を貫徹させようとするだろう。

 その罠に嵌らないためには先端技術とその生産過程を中国と接続させない空間的な“地政学的ソーシャル・ディスタンシング”を追求する必要がある。バイデン政権の今回の対中半導体輸出管理規制はその試みと見てよい。

 競争的共存の本質が少しずつ、表れてきた。ここでは共存とは、「問題を解決するというよりも条件を管理すべく競争を受け入れること」とされてきた。

 ここでの競争は、自由かつ公正に競争していけるルールや取り決めをつくり、あとは「より速く走る」ことを自らに課すことによって共存の余地を確保する、そして最低限、民間の技術が中国に軍事転用されないようにチェックする、との考えに基づいていた。

 しかし、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)によれば、今回の先端半導体輸出管理規制は「(中国に対する)最大限のリードを長期にわたって維持し続けなければならない」との考え方に基づいている。

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source : 文藝春秋 2023年1月号

genre : ニュース 政治 国際