“日米豪同盟”を締結せよ

この国をいかに守るか

森本 敏 拓殖大学特任教授・元防衛大臣
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森本敏氏 ©文藝春秋

 日本の安全保障政策は冷戦期以降、戦後の平和憲法下で緊密な日米同盟、防衛力の充実、国際協力の推進を軸に進められてきた。しかるに日本周辺の国際情勢を展望すると、従来のやり方では、もはや対応できそうにない。ウクライナ戦争が終わっても、ロシアは欧州だけではなく、インド太平洋における安全保障秩序の脅威になり続けるであろう。北朝鮮はもっと厄介である。独裁国が核兵器を持つと、それだけで周辺諸国にとって深刻な脅威になる。核兵器を国家威信の象徴と考える限り、決して手放さないからである。

 中国は、そう遠くない時期に台湾を統一することになろう。その手段と時期はともかく、必ず実現させると決断しているに違いない。その後、中国が日本の南西方面に触手を伸ばし、米軍が沖縄からグアムとハワイまで即応態勢を後退させ、中ロや北朝鮮がミサイルで威嚇しながら覇権を広げるというシナリオが考えられる。

 日本はこうした懸念国のすべてから脅威を受ける唯一の国である。

 台湾危機のシナリオは、台湾統一後における情勢変化を十分に想定して戦略的に対応する必要がある。

 最悪の場合を想定し、抑止力を維持しつつ、危機管理を行うことが、安全保障の要諦である。冷戦期以降、日米間における役割分担は、米国が攻撃、日本は防御の態勢にあったが、今後は日本がさらに主導的な役割を果たすべきだ。

 台湾危機を想定すると、台湾を支援・援助する国として、米国は当然としても、インドは想定しにくい。ASEANにはその余力がなく、韓国は北朝鮮の対応で身動きできず、欧州では遠すぎる。結局、米国を助けられるのは日本と豪州しかない。

 こうした事態を想定すれば、まず日米同盟の枠組みを日米豪に拡大し、三カ国で安全保障協力協定を締結するほか道はない。部隊の相互防衛のために支援協力し、豪州軍が日本に駐留できる態勢を作るべきである。相互防衛条約にするのは憲法改正後でもよい。英国などの欧州諸国にもこの安全保障協力協定に加わるよう働きかけることが望ましい。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

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