昨年5月下旬、新疆ウイグル自治区の公安当局からウイグル人に対する非人道的な強制収容に関する内部資料が流出した。「新疆公安ファイル」と呼ばれ話題になったそのファイルは、収容の理由として、「イスラム教の聖典『コーラン』を学習した」「携帯電話の電源をオフにした」など些細な行為を挙げた。収容所内の様子も画像によって明らかになったが、目隠しされた収容者が腕や足を縛られたまま施設内を移動し、武装した多数の看守は棍棒を持っている。
中には、ジムで体を鍛えたことを理由に12年も収容された者もいた。外見上「不放心人」(不穏な人物)、国旗掲揚式など地域の会合に欠席する、産児抑制政策に反して出産、「敏感な国家」への渡航も問題視されていた。
米国務省は20年版人権報告書において、ウイグル人などに対する事態をジェノサイドと明記した。ジェノサイドとは、「国家あるいは民族・人種集団を計画的に破壊すること」であり、集団殺害や大量虐殺だけを意味しない。1948年に国連総会で採択された「ジェノサイド罪の防止と処罰に関する条約」(通称「ジェノサイド条約」)の第2条は、「国民的、民族的、人種的または宗教的な集団の全部または一部を集団それ自体として破壊する意図をもって行われる行為」と規定する。
昨年8月31日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が衛星画像や証言を基に作成した約50ページの報告書を公表し、中国のウイグル人に対する侵害行為は「人道に対する罪を含む、国際犯罪の遂行」に当たる可能性があると公式に認め、13項目に及ぶ改善要求を盛り込んだ。中国政府が否定する事実を国連機関が認定した意味は大きい。
OHCHRのインタビューを受けた人の半数は厳格な監視の下で、時折しか親族との面会や電話を許可されていなかった。残りの半数は家族との連絡もできず、家族は居場所を知らないという。外部の人が家族を訪問する時には肯定的にコメントするよう指示され、毎日愛国の歌を歌わされ、顔に水をかけながら尋問された者もいた。中国側は強制労働の事実はなく「任意の雇用契約」だと説明するが、労働に合意しなければ収容所から出られなかったという。
日本の不十分なガイドライン
イスラム教に関わる活動への監視も強化しており、礼拝施設やモスクの取り壊し、巡礼者の旗に囲まれていた墓標が更地にされるといった状況が衛星画像で確認された。
中国政府側は老朽化したモスクを再建したと主張する。「過激派」の兆候を捉え、潜在的脅威である人物のデータを集約するとして、警察用アプリが宗教教材のダウンロードや海外の人々とのやり取りを監視している。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2023年2月号