今こそ米を食べよう

問題は食糧とエネルギーだ

山下 一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
ニュース 社会
山下一仁氏

 減反(生産調整)政策を引き起こした原因は、1960年代にさかのぼる。政府はJA(農業協同組合)と自民党の圧力に負けて、食糧管理制度の下で政府が米を買い入れる際の米価を大幅に引き上げた。

 この結果、米の供給が増え需要は減り、過剰が生じたため、政府は70年から減反を開始し、農家に補助金を与えて生産を減少させ、政府の買入れ量を少なくしようとした。

 95年に食糧管理制度を廃止した後は、これに代わり、供給を減らす減反が米価を高く維持するために使われるようになった。

 食料自給率が低下した大きな原因は、国産の米の価格を大幅に引き上げてその消費を減少させ、輸入麦の価格を据え置いてその消費を増加させたことだ。60年頃は米の消費量は小麦の3倍以上もあったのに、今では両者の消費量はほぼ同じ程度になってしまった。500万トンの米を減産して800万トンの麦(大麦等を含む)を輸入している。

 アメリカやEUは、価格は市場に任せ、財政からの直接支払いで農家を保護している。経済学的にはこの方が優れている。しかも、医療のように、本来財政負担が行われれば、国民は安く財やサービスの提供を受けられるはずなのに、減反は、補助金(納税者負担)を出して米価を上げる(消費者負担増加)という異常な政策である。納税者であり消費者である国民は二重の負担を強いられている。主食の米の価格を上げることは、消費税以上に逆進的だ。

 減反を廃止して米価を下げれば、貧しい人のためになるし、3500億円の減反補助金を廃止できる。米価が下がって困る主業農家への補てん(直接支払い)は1500億円くらいで済む。サラリーマン収入に依存している兼業農家には、所得補償となる直接支払いは不要である。兼業農家が離農すれば、農地は主業農家が引き取り、その規模が拡大してコストは下がり収益があがるので、いずれ直接支払いも削減できる。

食料自給率向上にもつながる

 シーレーンが破壊され輸入が途絶したとき、終戦直後の食生活を維持するだけでも、米は年間1600万トン必要である。それなのに、終戦時の587万トンから67年に1445万トンにまで拡大した米の生産量は、今は、減反によって670万トンしかない。食料危機が起きると国民の半数は餓死する計算だ。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : ニュース 社会