ウクライナ戦争は、1年経っても決着がつかない。ウクライナの国民の英雄的な戦いは同国東南部でのロシア軍の占領を半分以上、崩壊させたが、ロシアはさらに軍を動員、投入し、消耗戦、持久戦に持ち込む構えである。朝鮮戦争は1950年6月、北朝鮮の侵略で始まったが、休戦協定が結ばれたのは1953年7月、3年にわたる消耗戦だった。ソ連は戦争を長引かせることで米国、さらには中国を疲弊させようとした。
戦争をどこかで終結させなければならない。いずれかの段階でロシアとウクライナの間で休戦協定を結ぶ必要がある。G7首脳会議は「ロシアを勝利させない」ことを目的に掲げるが、それが何を意味するのか、そして意味させるべきか、つまり「ウクライナ戦争の勝ち方」を考えなければならない。
ウクライナにとって、そして同国を支援する日本を含む国々(グローバル・ウエスト)にとって、この戦争をどのように終結させることが望ましいのか。欧州とインド太平洋の秩序とパワーバランスにどのような意味を持たせる戦後計画を描くべきか。そして、その中での日本のゲームプランは何か。
そもそも、ここからどのような教訓を導き出すべきか?
ロシアに対するウクライナと米国とNATOの抑止力が効かなかったことが最大の教訓である。ウクライナ支援は、ロシア、さらには同じような修正主義国家に対する抑止力の再構築の営みでもあることを忘れてはならない。戦後計画においては、ウクライナの安全保障をNATOと有力関係国が保証し、ロシアを欧州の安全保障の枠組みに組み込むことが不可欠となる。その際、ウクライナの中立(自衛能力を持った中立=fortified neutrality)を中心的な柱に据えることになるだろう。NATOには加盟しない、しかし、EUへの加盟を認める。
次に、ロシアに対する経済制裁は効いてはいるが、思ったほど効いてはいないことを知るべきである。ロシアがウクライナに対するインフラ破壊と国民の戦意喪失に照準を合わせたトータル戦争にギアアップするにつれ、ウクライナの経済が急速に摩耗・疲弊している。経済の戦争は、軍事の戦争よりはるかに戦うのが難しい。常にその費用対効果をレビューする必要がある。
それから、中国とロシアがグローバル・ウエストに対抗し、連携し続けている事実である。中国は、ロシアの戦争とは一定の距離を置いているように装っているが、ロシアを外交的、経済的に下支えしている。少なくとも対ロ軍事(関連)支援をさせないよう対中圧力をかけ続けるべきである。
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