【し】『私家版 日本語文法』 人生を決めた1冊かも?

日本語探偵

飯間 浩明 国語辞典編纂者
ニュース 社会 教育

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです

 国語辞典を作る、という現在の仕事に関心を持ったきっかけは、国語辞典編纂者・見坊豪紀(けんぼうひでとし)の著作を読んだことでした。特に、現代語の実例を集めた『ことばのくずかご』(筑摩書房)の面白さは、すでにあちこちで紹介しました。

 しかし、と私は思うのです。国語辞典に関心を持つためには、その素地として、日本語そのものへの関心がなければなりません。その関心を、自分はいつ頃から持つようになったのだろう?

 日本語への関心を深めたきっかけはたくさんありました。その中で、読書体験として大きかったと思い返すのは、井上ひさし『私家版 日本語文法』(新潮社 1981年)との出合いです。

 80年代前半、中学生だった私にとって、井上ひさしは憧れの作家でした。先の読めない波瀾万丈の物語と、作品のあちこちで展開されることば遊び。なぜこんな面白い話が次々と書けるのか。

 ただ一冊、敬遠して読まなかったのが『私家版 日本語文法』でした。文法なんて小難しくて、つまらなそう。でも、書店に並んだ他の井上作品はもう読んでしまったので、試しに読んでみた。

 驚きました。面白かったですね。抽象的な机上の文法論などではなく、著者自身がいろいろな媒体から見つけてきた、生き生きした実例を元に、日本語の秘密を探っていくのです。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の
全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年5000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年5月号

genre : ニュース 社会 教育