ミシェル・ビアール著、小井髙志訳「自決と粛清 フランス革命における死の政治文化」

文藝春秋BOOK倶楽部

片山 杜秀 評論家
エンタメ 読書

「不逮捕特権」の歴史

「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない」。日本国憲法第五〇条だ。不逮捕特権の定めである。起源は大革命前後のフランスにあるだろうか。本書はそこを掘り下げる。誠実な研究である。

 1789年6月。大革命勃発の前月。聖職者と貴族と平民の三身分を代表する議員によって開催中の全国三部会はこう宣言した。「代議士によるいかなる提案、意見の表明、信条の表明、あるいは演説を理由としてその代議士の司法上の責任を追及し、捜索し、逮捕し、勾留することはできない」。何しろ革命間近の混乱期。三部会としては王権を抑えつつ政治経済を大胆に変革したい。しかし国王にもまだ力が残る。議会は弾圧されかねない。そこで三部会は議員の不逮捕を決議した。それからすぐ大革命。議員を脅かすのは王よりも暴力的民衆になる。不逮捕特権にテロからの安全保障が付け加わる。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年5月号

genre : エンタメ 読書