中上健次さんが亡くなって今年8月で31年になりました。享年46。昨年10月から今年3月にかけて「没後30年中上健次写真展」を和歌山県新宮市、新宿・写真ギャラリー、赤坂・山崎文庫の3カ所で開催。自然をバックにした写真、中上さんが書いた戯曲で唯一上演された「かなかぬち」の稽古風景、都はるみ復帰コンサート大阪会場での演出風景など、約60作品を展示したところ、約1300人もの方々にご来場いただきました。
かなり以前から、いつか中上さんの故郷、新宮市で写真展を開けたらと思っていました。地元の友人の方々が「健次!」と言って観に来てくれ、九州など全国各地からも熱烈な中上ファンが駆けつけてくれたそうです。ただ、すでに他界されていた中上さんのお姉さまに観ていただけなかったのはとても残念でした。
東京の写真展でも、ファンのみならず、文学研究者、行き付けだったゴールデン街のお店の店主、映画『十九歳の地図』『火まつり』の監督を務めた柳町光男さんなど、ゆかりのある方々が大勢観に来てくれました。ただ当時の中上さんの担当編集者の方々は、すでに退職されていて、連絡がつかなかったのが残念です。
来場者は中上さんの写真を前にして「アグレッシブに生きていたんですね」などと感想を寄せて下さいました。あるバーのママさんは「こんな、子供みたいな顔見たことない」と。そして多くの方々が「若くして亡くなって残念、生きていればどんな作品を書いたんだろう」と、その早すぎた死を惜しんでいました。その一方で「生まれていなかったので知りませんでした。読んでみます」と、中上さんと若い世代との新しい出会いもあり、この時期に写真展を開催して良かったとつくづく思いました。
私が、中上さんを初めて撮影したのは1986年7月のこと。熊野本宮大社旧社地・大斎原(おおゆのはら)にて戯曲「かなかぬち」が上演されることになり、地元での上演ということで雑誌の取材カメラマンとして同行しました。
中上さんは準備で忙しい合間を縫って、ライターの方と私を車で熊野の自然豊かな場所へと次々に案内してくれました。
しかも撮影中の中上さんは、自分の好きな場所だったからなのか、カメラを意識することなく伸び伸びと自分をさらけ出してくれました。
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source : 文藝春秋 2023年11月号