執筆は9時〜5時、絶対に残業しない

私が大切にしている10のこと

角田 光代 作家
ライフ 働き方 読書 ライフスタイル

これからは本当に書きたいものだけを書くことに決めた

(1)締め切りは必ず守る

 私にとっては、大切にしているどころか、「主義」と言ってもいいかもしれません。締め切り厳守を自分に課しているのは、20代の終わりに、土田世紀さんの『編集王』というマンガを読んだからです。青年マンガ誌の編集部を舞台にした作品ですが、その中に一人の漫画家が締め切りを守らなかったせいで、担当編集者が休日に子供の運動会に行けなくなったり、印刷所の人にまで迷惑が及んでしまう話がありました。不幸の玉突き事故というか、あまりに悲劇的な話だったので、恐ろしくて。それ以来、必ず締め切りを守るようにしています。世界平和のためです(笑)。

 連載小説に加えて、短編やエッセイ、書評などを含めて、1カ月に30個ほど仕事を抱えていた時期もありましたが、それでも締め切りに遅れたことはありません。数回程度、締め切りそのものを忘れていて、あわてて書き始めて、2日遅れで提出したことはありましたが、覚えていれば絶対に間に合わせています。

 1カ月の締め切りが一覧できるような表を作っています。以前はパソコンで、スケジュール管理のソフトを使っていたのですが、何かの拍子にデータが全部消えて大パニックに陥ったことがあったので、それに懲りて、今はノートに予定を書き込むようにしています。

(2)執筆は9時〜5時、絶対に残業しない

 毎日、自宅の近くにある仕事場に“通勤”して、午前9時から午後5時まで執筆すると決めています。最近は少し始業を早めて、午前8時半から午後4時半になりました。終業後は自宅に帰って食事をしたり、DVDで映画を見たり、コロナが落ち着いてからは飲みに行ったりしています。土曜日は時々、午後だけ仕事をしますが、日曜日は休みにしています。

 本当に忙しい時は、開始の時間を早めて、暗いうちから仕事場に行っていましたが、それでも終わりは、必ず午後5時と決めていました。私にとって大事なのは始まりよりも、終わりを決めることです。その方が順調に仕事や生活のサイクルが回って、心身ともに健やかでいられます。

角田光代さん ©文藝春秋

 もう20年以上も、この生活を続けています。過去に付き合っていた人が、9時5時で働く会社員だったので、一緒に夕食をとるために執筆する時間帯を合わせたのが、きっかけでした。その人とは、すぐに別れてしまったのですが、時間割だけが残った。その働き方が私には体質的にすごく合っていたんですね。

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source : 文藝春秋 2024年1月号

genre : ライフ 働き方 読書 ライフスタイル