危機説 楽天・三木谷会長 反省の弁

モバイル事業の赤字決算が続き、巨額の社債償還が迫るなかトップが激白した

三木谷 浩史 楽天グループ会長兼社長
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 楽天グループが2020年に参入したモバイル事業の赤字に苦しんでいる。2023年1〜9月期連結決算(国際会計基準)は、最終損益が2084億円の赤字(前年同期は2625億円の赤字)。同期間の赤字は5年連続だ。2018年12月期に10%を超えていた自己資本比率は一時4%を割り、楽天証券株の一部売却、楽天銀行の上場と持ち株売却、第三者割当増資などの資本増強を迫られた。こうした動きを「楽天解体」と呼ぶメディアもある。

 全国ネットワークを構築するため設備投資に累計1兆円をつぎ込んだが、契約数は昨年末に600万件を超えたところで、単月黒字の目安となる800万件に届いていない。一方で2024年からの2年間で総額8000億円という巨額の社債償還が待ち受ける。

 絶体絶命とも思えるこのピンチを、楽天グループは脱することができるのか。(聞き手 大西康之・ジャーナリスト)

 ――自前の回線網を敷くには巨額投資が必要で、モバイル事業が大赤字になることは最初から分かっていました。あえてレッドオーシャンに飛び込んだのはなぜですか。

 三木谷 かつて激しく競争していた先行3社がそれぞれ、毎年約1兆円の利益を上げるようになり、日本の携帯電話料金が高止まりしていました。「もっと安くしてほしい」という世の中の要求に応えたい、と考えたのです。

 楽天モバイルが提案した料金であれば、従来の他社の料金との比較で、両親と子供2人がスマホを使っている家族なら1年間で20万円節約できる計算になります。今はほとんどの人が携帯電話を使っている時代なので、これは社会的に意義がある仕事だと思っています。

 もう一つの理由はGAFAM(グーグル=現アルファベット、アップル、フェイスブック=現メタ、アマゾン・ドットコム、マイクロソフト)がMNO(自前回線を持つモバイル事業)をやっていないからです。正確に言うと、グーグルやメタは一度、やろうとしてやめた形跡があります。なぜやらないかと言えば、モバイルがとても複雑で、手間がかかる事業だからです。

 我々もやってみて分かりましたが、電波免許の取得から、ネットワークの構築、メンテナンスまで気が遠くなるような作業が必要で、その割には儲からない。彼らは元々、とても投資効率のいいビジネスをやっているので、モバイルは後回しになってきたのだと思います。

 しかしモバイルはネットワークサービスの入り口としてますます重要性を増してくるので、いずれ彼らも入ってくる。アップルなどは確実にやってくるでしょう。我々はその前に参入しておきたかった。楽天グループはインターネットショッピングの楽天市場、楽天トラベルなどのネットサービスやクレジットカードの楽天カードをはじめとするフィンテックなど70を超えるサービスを展開していて、それらとモバイルを組み合わせることで既存の携帯電話会社にもGAFAMにもできない新しいサービスを提供できる。GAFAMが出てくる前に楽天経済圏をもう一段、進化させる。そのためにこのタイミングでモバイル事業をやる必要があったのです。

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source : 文藝春秋 2024年3月号

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