石原慎太郎(1932〜2022)は、作家・政治家として大きな足跡を残した。作家の北方謙三氏が、石原文学と人物の核心に迫る。
石原慎太郎は、私が珍しく好きな作家でした。
私は政治家としての石原さんを知りません。最初にお会いした時、石原さんはすでに代議士だった気がしますが、「政治家の鎧」をまとっている印象がまったく感じられなかった。いつでも上着を脱いで「さあ、議論しようか」という文学青年のような人でした。
![](https://bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/e/f/1600wm/img_ef943f6054e6308f16ffc979d8350f0739913.jpg)
石原さんの小説には、いまの小説にはない「毒」がありました。デビュー作にして芥川賞を受賞した『太陽の季節』は、戦後民主主義の欺瞞をあばいたといわれていますが、本当の意味で社会の欺瞞をあばき否定したのは、『処刑の部屋』だと私は思っています。
リンチ、暴力を執拗に描きながら、その暴力に至る主人公の心情に毒が凝縮されている。石原さんの小説はさまざまな毀誉褒貶にさらされてきましたが、それは、石原さんの小説がそれだけ強い毒性をもっていたからでしょう。
石原さんはまた、死に対する感度が高く、死を鮮烈に深く感じる人でもありました。その感性は明らかに文学的。どんなに政治家としてのキャリアを重ねても、ずっと文人であろうとしていたように思います。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
今なら初月298円で楽しめる
-
今なら、誰でも、この価格!
1カ月プラン
キャンペーン価格
初月は1,200円
298円 / 月(税込)
※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。
-
こちらもオススメ
1年プラン
新規登録は50%オフ
900円 / 月
450円 / 月(税込)
初回特別価格5,400円 / 年(税込)
※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2024年8月号