石原慎太郎(1932〜2022)は、作家・政治家として大きな足跡を残した。作家の北方謙三氏が、石原文学と人物の核心に迫る。
石原慎太郎は、私が珍しく好きな作家でした。
私は政治家としての石原さんを知りません。最初にお会いした時、石原さんはすでに代議士だった気がしますが、「政治家の鎧」をまとっている印象がまったく感じられなかった。いつでも上着を脱いで「さあ、議論しようか」という文学青年のような人でした。
石原さんの小説には、いまの小説にはない「毒」がありました。デビュー作にして芥川賞を受賞した『太陽の季節』は、戦後民主主義の欺瞞をあばいたといわれていますが、本当の意味で社会の欺瞞をあばき否定したのは、『処刑の部屋』だと私は思っています。
リンチ、暴力を執拗に描きながら、その暴力に至る主人公の心情に毒が凝縮されている。石原さんの小説はさまざまな毀誉褒貶にさらされてきましたが、それは、石原さんの小説がそれだけ強い毒性をもっていたからでしょう。
石原さんはまた、死に対する感度が高く、死を鮮烈に深く感じる人でもありました。その感性は明らかに文学的。どんなに政治家としてのキャリアを重ねても、ずっと文人であろうとしていたように思います。
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source : 文藝春秋 2024年8月号