慌ただしく移ろう時代に背を向けるかのように、古典的なものづくりに回帰する、スペインの若き帽子職人たち。徒に拡大を目指すことなく丁寧に暮らし、作品に向き合うふたりの姿勢は、新しい工芸と職人のあり方を示している。
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バオバブの繊維を編み天然染料で染めた「マレッサ ハットメーカーズ(MALEZA Hatmakers)」の帽子は、まるでアンティークのような趣。マドリード出身でグラフィックデザイナーとして活動したハビエールさんと、オランダ出身で文学を専攻したミルテさんによる作品だ
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30代のハビエールさん(右)とミルテさん(左)が営む「マレッサ ハットメーカーズ」
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マンションの一室を改装した自宅兼工房でつくられる帽子
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手づくりならではの迫力と温もりが自慢
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始まりは愛する人のために
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かつてハプスブルグ家のもとで繁栄を極めた壮麗な都市、マドリード。その旧市街にある小さな工房「マレッサ ハットメーカーズ」が、目の肥えた世界中のファッション愛好家たちの間で、話題を集めている。19世紀のアンティークを思わせるその帽子は、どれほどの老舗工房がつくっているのだろう? そんな想像を抱えて向かうと、出迎えてくれたのは意外にも若き職人カップルだった。
「帽子づくりを始めたのは7年前。私が好きだった古い帽子をハビエールに贈りたくて、調べるうちに深入りしてしまったの」と笑うミルテさん。しかしスペインの帽子産業は衰退しており、道具や素材はおろか、教えを乞うべき職人すら残っていなかったという。そこでふたりが挑んだのは、現代社会ではとうに喪われた工芸品的な帽子づくりだった。
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source : 文藝春秋 2024年9月号