【ビ】「ビブリオバトル」をカラオケ並みの気軽さで

飯間 浩明 『三省堂国語辞典』編集委員

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国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです

 文化庁の2023年度「国語に関する世論調査」が発表され、1か月に1冊も本を読まない人が6割台に上ると報告されました。「さすがに割合が多いな」と思いました。前回と調査方法が異なり、読まない人が「増えている」かどうかについては議論もあります。ただ、読まない人の割合が「多い」という結果は、一面の真実ではあるでしょう。

「もっと本を読みましょう」という呼びかけが必ずしも効果を上げないことは、私もいろいろな場面で経験しています。それに、本なら何でも読めばいいわけではありません。生半可な本を読むよりは、ネット情報のほうがよっぽど有意義という場合もあります。

 昔、高校生の前で読書の面白さを力説したことがあります。ある生徒が、これを聞いて珍しく本を買ったと教えてくれました。でも、書名を聞いてがっかり。日本語の歴史に関するトンデモ本で、当時強く批判されていた本でした。せっかく読書に関心を示している生徒に「その本はやめたほうがいいよ」とも言えず、深く悩んだものです。

「本を読みましょう」とか「本は面白いよ」とかいう一般論では、望ましい結果につながるとは限りません。どうせなら、ネットで手軽に読める以上の内容を持った、面白い本を読んでほしい。

 十数年前から「ビブリオバトル」という試みが広まっています。バトルの出場者が自分の読んだ本の面白さを5分で紹介し、聴衆が自分の最も読みたいと思った本に投票するというゲームです。読書案内にエンターテインメント性を取り入れた、きわめて優れた試みです。

 ビブリオバトルの長所は、お仕着せの読書感想文では表現されない、血の通った読書体験が語られるところです。質疑応答の時間もあるので、出場者の極端な思い込みは指摘を受ける可能性があります。トンデモ本が無批判に受け入れられる危険は抑制されるでしょう。

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source : 文藝春秋 2024年11月号

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