西尾幹二、高階秀爾、勝俣恒久、楳図かずお、三笠宮崇仁親王妃百合子

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム

★西尾幹二

西尾幹二 Ⓒ文藝春秋

 思想史家で評論家の西尾幹二(にしおかんじ)はニーチェ研究から出発して、現代日本の思想状況を激しく批判した。

 ドイツ留学から帰国してすぐに開始したのが、西欧思想についての日本人の誤解を指摘することだった。「平等の観念でも自由の意識でも、それらを成り立たせている社会との関わりにおいてしか理解できないことに、日本人は気がついていない」。その議論の鋭さは三島由紀夫などの目にとまり、若手論客として脚光を浴びることとなる。

 1935(昭和10)年、東京に生まれる。父は銀行員だったが貴族院議員の秘書となり、政治評論を書いていたという。日本女子大学校(現・日本女子大)で学んだ母の影響で本好きな少年に育つ。小石川高校をへて東京大学文学部に入りゲーテ研究で知られる手塚富雄に師事した。電気通信大学助教授などをへてドイツに留学し、帰国後、69年に『ヨーロッパ像の転換』を刊行し論壇に衝撃を与える。

 そのいっぽうで、ニーチェを中心とする西欧思想の研究と翻訳を続け、77年に分厚い『ニーチェ』2部作を刊行して「大きな評判をいただいた」。翌年には一般向けの『ニーチェとの対話』を刊行して多くの読者を感動させた。

 外国人労働者が急増した80年代後半、カリフォルニアの農園で働いた経験のある石川好と「移民」について激しい論争を繰り返す。88年には『戦略的「鎖国」論』を発表し安易な外国人労働者の受け入れに警告を発した。

 90年代、冷戦が終わり東西ドイツが統一したのを受けて、ドイツは戦争を謝罪したが、日本は謝罪していないとの議論が盛んになる。西尾は94(平成6)年『異なる悲劇 日本とドイツ』を刊行し、「ドイツが謝罪したのはユダヤ人虐殺の罪であって、戦争犯罪についてではない」と指摘し、日本の戦争責任をめぐる論争の中心となった。

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source : 文藝春秋 2025年1月号

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