『大楽必易 わたくしの伊福部昭伝』片山杜秀/新潮社
『江戸の憲法構想 日本近代史の“イフ”』関良基/作品社
『女の子たち風船爆弾をつくる』小林エリカ/文藝春秋
なるべく新刊の棚には目を通すのだが、読書はどうしても昭和史関連に片寄りがちだ。ところが、今年の3冊を選んでみたら、昭和史ど真ん中の本はなかった。ゆるい意味でなら、どれも昭和史と言えるのだが。
映画「ゴジラ」のあの単純強烈なテーマを作曲したのが伊福部昭だ。『大楽必易(たいがくひつい)』は作曲家本人の証言をたっぷり取り込んだ評伝で、幼稚園時代から「ゴジラ」に入れ込み続けた著者の意欲、情熱、傾倒が爆発寸前になるほど溢れている。
伊福部は北海道にあって、独学で作曲を学び、昭和10年に「日本狂詩曲」がチェレプニン賞を得て、世界初演される時は21歳という若さだった。西洋近代とは違う音、律動を北の風土の中で探し続ける伊福部には、「自民族中心主義とはかなり違う」民族主義があった。作曲家によるオリジナルな「近代の超克」の試みを、著者は「近代人の教養としての音楽からいちばん遠いところに行った」と見る。
憲法といえば、現行の憲法か明治の帝国憲法、自由民権期の草の根の憲法案などが取り上げられるが、『江戸の憲法構想』とは耳慣れないだろう。幕末にも憲法構想はあった。それも幕臣たちが中心になっての。その憲法案では議会や内閣や天皇、国民の権利と義務がどう書かれていたか。こうした憲法構想が忘れられたのは、薩長のテロと武力討幕による政権奪取があったからだ。「合理的で普遍的で内発的な近代化」がありえたのではという著者の問いは憤りに満ちているが、説得力も高い。
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source : 文藝春秋 2025年1月号