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 だが、疑問の答えを説明するようにも思える材料は、公園内ですぐに見つかった。通常の交通事故遺族の署名集めの現場ではほとんど見られない、警官の姿が数多く見られたからだ。事情に詳しい筋によると、私服警官を含めて10人近くが現場に来ていたという。

 2019年7月23・30日号の『FLASH』によれば、板橋区弥生町にある飯塚氏の自宅周辺も、複数の警官が警護をおこなっているようだ。一般的に、警官が事故加害者の自宅を警護するのは異例であるとされる。

4月19日に発生した事故。運転者、同乗者を含む10人が重軽傷を負い2人が死亡

「稲垣メンバー」「島田司会者」「小泉タレント」

 2019年の上半期、インターネット上を中心に最も流行した言葉のひとつが「上級国民」だ。もとは2015年に流行したネットスラング(参考:知恵蔵mini「上級国民」)だが、4月の池袋事故を境に「特権的な上流階層」を漠然と指す形で用いられるケースが増えている。

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 理由となったのは、事故発生の数日後から、被疑者の飯塚幸三氏が捜査当局や大手メディアから妙に優遇された扱いを受けているため――。少なくとも、そうした印象を抱いた一般人が大勢いたためだ。

ネットを検索すると飯塚氏の扱いに違和感を示す声が数多く見つかる

 例えば、本人が死傷事故を起こした事実が明白にもかかわらず、飯塚氏は事故4ヶ月後にいたるまで逮捕されていない(後述)。さらにメディアの報道でも、事故数日後からは「飯塚元職員」(NHK)や「飯塚元院長」(朝日・讀賣・毎日・日経ほか)といった、本人の名誉を守るかのような耳慣れない呼称が使われるようになっている。

 ここから、2001年に道交法違反などの容疑で逮捕された元SMAPの稲垣吾郎が「稲垣メンバー」、2004年に傷害罪容疑で書類送検された島田紳助が「島田司会者」、2005年に道交法違反容疑で書類送検された小泉今日子が「小泉タレント」などと呼ばれていたのに通じる、ちょっと不思議なニュアンスを感じる人は少なくないだろう。

逮捕前でも「容疑者」呼称はあり得る

 もちろん、飯塚幸三氏が逮捕されないことや「容疑者」と呼ばれないことの理由はすでに各所で指摘されている。例えば、ある犯罪の被疑者を「容疑者」と呼ぶかは各メディアの判断に任されており、特に逮捕や書類送検がまだの場合、被疑者の呼びかたは各社の自由である。

 しかし、今年5月28日に川崎市登戸駅周辺で51歳の男が刃物で2人を殺害した事件では、被疑者の自殺によって逮捕がなされていないにもかかわらず、各社の表記は書類送検前の段階から一貫して「岩崎隆一容疑者」だった。

 7月18日に京都アニメーション放火殺人事件を起こした人物も、逮捕状の請求が発表される前の7月19日の段階から、各社が揃って「青葉真司容疑者」と表記している。決して「岩崎元雀荘店員」や「青葉元埼玉県庁職員」などとは呼んでいない。

逮捕前の段階から京アニ放火犯を「容疑者」呼称で表記している2019年7月19日付け『FNN PRIME』の記事